hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

ちょっと怖い子育て 辻村深月『クローバーナイト』

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いやいや、恐ろしい小説でした。とはいってもテーマは保活なのですが…。

保活なのに恐ろしいとは異常ですが、その異常さがよくわかる小説でした。

 

保育園に入るために偽装離婚を企てたり、保育園に入ったら入ったで超高級誕生会をしなければならなかったり、お受験で村八分にされたり…。生きにくい要素が満載に描かれている子育て世代の話がたくさん…。もちろん小説なので、ノンフィクションではないけれど、多分にノンフィクションの要素があるのではないかな、と推測できるところがまた怖い。

 

多分当事者じゃなかったら冷静にいられると思うのですが、巻き込まれていたら自分の立ち位置を見失いそうな狭い世界の様子。離れて客観視することができたら、きっと異常さに気付くと思うのですが。そう思えたのも、この小説を読んで客観視できたからかな。

 

そんな世界の中で救いなのは、主人公の夫の存在。主人公の夫は子育てに協力的で、とにかく夫婦でたくさん会話をしています。子育ても、もちろん一緒にしています。核家族で子育てをする家庭が多い今、いろいろなことを共有するという部分が一番求められているナイトの要素だと感じました。時代によってナイトの役割は変わりそうだけれど、怖い中に夫婦の何気ない会話も含まれていて、そこにちょっとほっとした読書でした。

 

 

 

今日の片付け 寝る部屋のあかり

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久しぶりの片付けカテゴリー。まだまだ、捨てたり入れ替えたり。記事を書いていない間も、小さいものをごそごそ整理中です。

 

今週はだいぶ年季が入ってきたソルトランプを買い換えました。元は授乳時に明るすぎないランプを探していて、プレゼントしていただいたもの。今は専ら寝室の読書時間に使っていました。

 

我が家の寝室は頭側にコンセントがあり、差し込んだまま寝てしまうこともよくありました。ところが先日電磁波のコンサルタントを受けたときに、「使わない電化製品のコンセントは抜く」ことが大切と教わり、実践してみるものの…。コンセントまでの距離が少しあったり、眠くて忘れてしまうことが多々。主な使い道の読書灯としても、明かりが不十分だったので、これを機に買い換えました。

 

新しい明かりはパナソニック、ランタン。ずっと探していたランタンタイプにしました。こちらのブログで気になり、電気屋さんで実際の大きさを確かめて買いました。

www.cozy-nest.net

 

電池式なのでわざわざコンセントを抜く必要がなくなり、前のソルトランプよりも明かりが強いのが良いです。2段階ある明かりを強いほうにすると、夜の読み聞かせ時にしっかりと頼れる明るさ。軽くて移動させるのも簡単、2つあるどちらの布団で本を開いても、近くに持っていくことで見やすく読みやすくなりました。

 

我が家ではまだまだ不十分な災害時の備えとしても、役に立つ良い買い物ができました。

ソルトランプはたまたま近くでバザーがあったので、出品。ワンイン、ワンアウト(一つ買ったら一つ捨てる)の法則で、小さなものでも家の中のものをなるべく増やさずにいます。

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普通に?生きること 吉田修一『横道世之介』

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前回のブログ、小川糸さんのエッセイにこの本のタイトルがあり、早速読んだもの。

おもしろいのは役に立つ教訓やら、そんな感じのことは全く書かれていないのに、読後感がなんとも味わい深いのです。「普通に生きる」ことはどういうことなんだろうと、つい考えてしまう作品でした。

 

主人公はタイトルの世之介。舞台は世之介が田舎から上京して、都内の大学に通うところから始まります。大学一年生…。私にも覚えがありますが、大人になったような状態ですがまだすねかじりの、そんなたいしたことはたいていしていない時代…(もちろん違う方もいらっしゃると思うけれど)。サークルに入ったり、車の免許を取ったり、授業をさぼったり。

 

そんな平和な世之介の青春からふと離れて、時々世之介の出会った人たちの数年後の様子が描かれる場面が挟み込まれています。それを読んでいると、世之介という存在が周りの人たちにどこか影響を与えていて、関わった波紋のようなものがその方たちに浸透しているのがわかります。

 

世之介は決して大したことはしないのですが、それでも人の心の中に確かに生きていた跡を残していくのです。大した影響を与えないと思っている普通の生き方をしている人が、人と関わる時間や出会ったことだけでも、それぞれの記憶に残り、そのあとの人に波紋を与えていく様子が絶妙でした。

 

そんなことを思っていたら、最後にこの一文が目に入ってきました。

「今からちょうど一年前、大学進学のためにここ東京へやってきた十九歳。この一年で成長したかと問われれば、「いえ、それほどでも……」と肩を竦めるだろうが、それでもここ東京で一年間を過ごしたのは間違いない。」 

 

人と出会うこと、その場で時間を過ごすということ。大きな影響を与えたり与えられたりした方だけではなく、いろいろな方と出会ったことだけでいい。人との出会いでそれだけを 大切にしてもいいのではないか、とこの小説を読みながら思いました。

 

 

エッセイ+小説のサンドイッチ 小川糸『喋々喃々』

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先週、図書館にて小川糸さんのエッセイをなぜか大量に借りて、読んでいたところすっかり著者のエッセイにはまってしまい、小説までよみふけっている最近です。

 

エッセイ→小説→エッセイ、と幸せなサンドイッチ読書をしています。

思えば小川糸さんの小説はたくさん手に取って大好きでいるのに、

世界にはまる 小川糸『ツバキ文具店』 - hon-nomushi’s blog

すべてが満たされるー小川糸『つるかめ助産院』+『これだけで、幸せ』 - hon-nomushi’s blog

全てを刊行順に読んでいなかったという。

何となくタイミングが合ったのでしょうね。

 

映画にもなっている『かたつむり食堂』でのデビュー時から始まっているエッセイの刊行ですが、その次2作目の『喋々喃々』を初めてエッセイの中で知り、読み始めました。著者は普段の生活がとても丁寧な方だと思うのですが、それが『ツバキ文具店』だけでなく、この作品にも余すところなく生かされていました。料理を丁寧にしたり、掃除を清める意味を込めてしたり。そのすべてが小説の色々なところに生かされているのを、全ての作品を通じて感じ取ることができます。今回の主人公はリサイクルの着物店を営んでいるのですが、着物の背景もとても丁寧に描かれていて、本当に勉強になりました。

 

主題は、主人公が妻子ある男性と恋に落ちる様子が丁寧に描かれているところだと思うのですが、舞台になっている谷中の雰囲気も捉えられていて、自分も住んでいるかのような感覚が得られるほど。

読んでいる間、何度も別の世界にトリップしているような引き込まれる感覚が強くありました。なかなか普段の生活に戻れないような…。

 

普段は音楽を聴きながら本を読むことはあまりないのですが、たまたま好きな映画「Drive」のサントラとこの本がとても合ったので、何度も音楽を繰り返し聞きながら、世界にひたっていました。

www.youtube.com

音楽とともに、主人公の世界にしっかりはまりました。別世界に行くことができるのは、しっかりとした小説のチカラがあるから。幸せな読書でした。

 

番外編ー映画「いただきます」

少しご無沙汰していました。体調等色々あり、休養中でした。

今は、元気に復活しつつあります。

昨日はアップリンク(渋谷)まで、素敵な映画を見に行ってきました。

 

itadakimasu-miso.jp

舞台となっている高取保育園では、玄米、みそ汁の食事が基本。たくさんかんで、おいしく食べて、たくさん運動して子どもたちが元気に過ごしています。毎年味噌も子どもが仕込み、できる限り自分たちで食べ物を作っている様子が一年を通して撮影されています。自主上映の映画では高取保育園だけだそうなのですが、今回劇場版には座間市の麦っ子畑保育園の様子も入ったとのこと。家族で見に行きました。

 

まずは本当に映像が美しくて、圧倒されました。すべての場面が本当に美しかったです。子どもたちがおいしそうにご飯を食べている姿が「生きている」という力に満ち溢れていて、ただそれを見ただけで感動して涙が出てくるほどでした。地味な、でも力に満ちたごはんの映像。海苔巻きや、ひじきの煮物。だしを取って、大切に作られた料理をたくさんかんでいただくこと。

 

子どもたちの顔を見ていたら「食べることが楽しい」ことは、一生の財産だと思いました。そして「食べることが大好きな子どもは、きっと自分のことを大切にできる」という思いが確信になっていきました。子どもたちが本当に生き生きしているのです。園長先生は何度も「食が大事です」とおっしゃっていました。

それは保育園が変わっても同じ。麦っ子畑保育園でも、子どもたちは動物性のものを使わない和食の給食をもりもり食べていて、たくさんたくさんおかわりしています。お皿に残ったコメ一粒も、拾って食べたりお皿をなめたり。(約1名、とても見慣れた方が…笑)

 

子どもたちの映像を見て「ああ、食べるっていいなあ、やっぱり大好きだなあ。」という自分の気持ちに気づきました。お菓子を食べたりケーキを食べたりするハレの日も大好きだけれど、やっぱりケの日の地味な(?)だしの味がちゃんとする煮物やごはん、自分が作る梅干しや、お味噌汁のある日があるからこそ、ハレの日が楽しいものになる。

 

特に小さい人は自分で食を選べないから、親がケの日のごはんを味覚を通じて伝えていく大切さ。ケの日のごはんは、命とからだを支えていくもの。小さい人ほどお出汁や味噌のおいしさが、ちゃんとわかるのですよね!そういう確信が映画を見てさらに腑に落ちました。

 

ケの日のごはんパワーが、もっと多くの方に伝わったらいいなあと心から思いました。本当においしいと思う、魂が求めるような食は、実はとてもシンプルなものなのかもしれません。たくさんの人がケのごはんパワーに気づいたなら、大切に作られたおしょうゆやみそがもっと流通して、幸せなごはんが増える。日本のものを使った調味料が、たくさんの家庭に常備されること。そうしたら良い循環がもっともっと生まれるような気がします。食に迷ったときなどにぜひ、見ていただきたい作品です。

 

グレーの可能性 『すっきりインテリアが心地いいシンプル暮らし』

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本屋さんで見て、「あ、これは!」と思ったインテリアの本です。

最近ミニマムなインテリアにとても惹かれているので、モノが多い部屋を見るとなんだか疲れてしまうのです。だからといってものすごくモノが少なすぎると、それはそれで面白くない。

 

そんな時、バランスが取れているキーワードが「シンプル」「すっきり」だと気づきました。モノが多くても視覚的にうるさくないお部屋だったり、シンプルだけどナチュラルなだけではない、面白い個性のあるお部屋。そんな実例がたくさん載っていて、ときめきながらページをめくりました。

 

中でもお気に入りは、グレーが基調の広瀬裕子さんのお宅。

グレー色味によってシルバーに近い光沢のあるものだったり、暗い雨の降る前の空のような色だったり、幅が本当に広い色だと思うのです。そんなグレーのグラデーションが、余すことなく生かされていて、本当に美しい部屋でした。

 

「グレー=あいまい」な色というイメージ。好きだけれど「好き!」と何となく何かに遠慮して言葉にできなかったけれど、インテリアでここまで美しく表現されているのを見たら、「やっぱりグレーが好きだ!」と再確認しました。

 

色々なお部屋を見ることで自分の好きなテイストを知る、というのは、

色々な方の着こなしを見て自分の好きなテイストを知る、のと同じプロセス。

やっぱり実際のお部屋を見ると、自分の目指す方向がわかり、気持ちがすっきりします。それこそが、こういったインテリア本を見る楽しみ。

 

 

別府の小さな冒険とお供 D&Department Project 大分 

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ちょうど一年前。初めて大分、別府に一人旅をしました。

大学院の学生だった頃、訳があり学部の授業をとっていました。その時の英語の先生が別府の話をしてくれて、いつか行ってみたいとずっと思っていたのです。その頃はあまり日本に興味がなく、国内の旅行はほとんど行く気もなかったはず。それでも記憶に残っているなんて、先生を通して知った別府が面白かったのだと思います。

 

それから10数年。去年たまたま一度だけ伺ったヨガの開催場所に、別府のB&B(ベッド&ブレックファースト)のきれいなパンフレットがありました。一度きり、それ以来全くそのヨガには通っていないので、まるでパンフレットに出会うために行ったようなものでした。それを見て別府に行きたいと思っていたことを、急に思い出しました。

 

それから数か月後。めったに一人旅のチャンスはないのですが、「ここだ!」というタイミングがうまく重なり、別府への一人旅が実行できることになったのです。

拠点はもちろん、パンフレットの宿「BEPPUくにさち」。宿に連絡をし、レンタカーを手配し、友人にこのD&Department大分をお借りしました。実は旅先で一人運転をするのは初めて。一人の時はなるべく公共交通機関で移動していたのですが、別府の案内を見るとレンタカーが最適のようで、決断。

 

知らない場所を運転するのは本当に緊張することだったのですが、やってみて、本当に良かった。この本に載っているピザが食べたくてインターに向かうと、ETCカードがないと入れないというアクシデントがあったり、霧が濃くなってきてドキドキしたり。

(別府インターの名物、しらすピザ、かぼすしぼり)

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温泉に行った帰り、車のカギが見当たらなくて焦ったり。駐車場の場所なんていつも覚えていないので、必死にメモしたり。まあ、慣れていない車の旅だったからこそのハプニングばかりでしたが、初めていつも運転をしてくれている家族のチカラに感謝をしたのでした。

 

車だったからこそ泊まることができたBEPPU☆くにさち。ホストのあまねさんの作ってくださった朝ごはんがおいしかった!あまねさんはたくさん、たくさん旅の情報をいただいただけでなく、地元の飲み会にも連れて行ってくださり、人のつながりにもたくさん触れられて、大満足の旅になりました。あまねさんのB&Bに出会えたから、この旅が実現したのだろうなと思います。一人でのんびりもよし、家族や友人と泊まるもよし、ロミロミマッサージも受けられます。マッサージを受けた後1階の自分の部屋に戻るだけでいいのが、本当に至福でした。

kunisachii.exblog.jp

 

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一人で知らない街を運転することは、人によってはなんでもないことかもしれません。でも、私にとってはそのことが冒険でチャレンジでした。あまねさんは「そうやって強くなっていくのよね」と、私の冒険をちゃんとわかってくださったのでした。

そうやって、どんな場所でも自由に自分のしたいことができるようになっていく。それこそ、「生きていて楽しい!」の一つの要素になることを再確認した旅でした。