hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

読み返し、続きのある喜び 梨木香歩『西の魔女が死んだ』

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西の魔女が死んだ

なんて衝撃的なタイトルでしょうか。児童書研究の論文を読んでいた時、子どもと死に関する本の中にこのタイトルがありました。タイトルゆえに忘れられなくて、それから手にとった梨木さんの本。最近行った図書館の大人むけコーナーで、再び同じ本に出会いました。装丁が違うと児童書とは全く違う印象の1冊。

 

読んでみると、以前出会った時とは違うところが響きました。例えばおばあさん(=西の魔女)の丁寧な暮らし。まいが悩んでいることへのおばあさんの対応。暮らし方や人との接し方。以前読んだときはわたしもまいのようにお隣のげんじさんは苦手で、どうしておばあさんがおだやかに接することができたのかわかりませんでした。でも今は少しだけわかるような気がして。少しずつ違った視点でまた新たに体験しなおした感じがしました。

 

うれしいのは続きが書かれていること。まいと家族との新しい物語やおばあさん自身が語り手となって物語る新たな章が加えられていました。読み返して新しい章が加えられていると、それだけでなんだか嬉しくて。よく知る大好きな人のその後を聞いた気持ちになりました。読書に続きがあることは、本当に喜びです。

 

最後に印象的だったのは、作者自身の言葉。あとがきには「出版したときは自信がなかったけれど今この作品を読み返すことで、大きな声で語らなくても大切なことを伝えることができることに自信をもっている」というようなことが書かれていました。時間をかけ、作者自身が自分の書く力の成長を感じていらっしゃるのが印象的でした。仕事は違えどもこんな風に自分を成長させていきたい、そんな実例でもあると思いました。

大人の方にはぜひぜひ、こちらの装丁の方をおすすめします!

災害備蓄の思わぬヒント 尾崎友吏子『ミニマリストのもちもの帖』

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図書館で目に入り、さっと借りてきたミニマリストの本。思わぬところで参考になるところがたくさんありました。

 

いつもブログを楽しみにしている尾崎さんの本。ミニマムで合理的な家事がとても素敵で、いつも参考にさせていただいています。家の中の持ち物をこうやって見せていただけるのって、なんだか「かばんの中身拝見」の家バージョンみたい。わくわくします。

 

こうやって一覧を見せていただいて気付いたこと。

決して物の数が極端に少ない(一般の家庭よりはもちろん少ないのですが)のではないのだな、ということ。一覧にするとたくさんお持ちのモノもあるし、キュウクツな感じが全くしませんでした。

そしてもう1つ、気付いたのはモノが長きにわたって大切にされているものだということ。ジノリの食器も20年以上使われていたり、必要な時は同じものが買い足されていたり。マイ定番がしっかりあり、選び抜かれているすがすがしさを感じます。

 

一番今回参考になったのは、災害備蓄のリュックでした。

尾崎さんは家族全員分のリュックサックを準備し、その中に新しい下着やお子さんの上履きも準備されているそう。お子さんのものは一つ上のサイズを準備することによって、災害時にもサイズアウト時にも、どちらにもすぐ対応できるように。慌てて買いに走らなくていいやり方に、目からうろこでした。「いつもの備えと災害の備えをつなげて準備する」とは、なんて賢いやり方!

 

思い返してみると私の場合、洋服や下着はあわててダメになってから買うことが多いです。そうすると予算取りに不安を感じたり、あわてて買ってしまったり。失敗もたくさん。前もって準備しておくことで、災害にもいつもにも備えておけるのはすごく安心できそう。早速取り入れようと思います。

まずは定番の見直しからかな。書き出してチェックしてみようと思います。

頼りになる一冊 (再び)瀬戸口しおり『私の手料理』

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今年は梅の出がすごく早かったみたいで、いつもの八百屋さんで注文が間に合いホッとしているところ。梅雨もあっという間に終わってしまいました。今年の梅干しもしっかりと梅酢があがりました。

 

以前もご紹介した本ですが、

hon-nomushi.hatenablog.com

味噌作りのときと梅仕事の時は、この本をとても頼りにしています。ネットでもほかの本でも、いくらでも作り方は載っているのですが「この本を見れば安心」という感覚はやはり本だからのように思います。いつでも手に取れるから安心なのと、初めての手作りから寄り添ってくれているから、わたしの保存食作りにはなくてはならない1冊です。工程も1つずつ写真で丁寧に追われているから、迷った時は必ずこれで確認します。

 

瀬戸口さんの梅干しは重しのないタイプ。完熟させた梅を使います。手作りだからすべてを本の通りにする必要はないですし、毎年なにかと作り方は変えています。でも基本は瀬戸口さんのレシピと決めておくと、いつでもそこに戻れる安心感があります。今年もお世話になりました。

 

流行は追わないから 『ありのままが美しいパリマダムグレイヘアスタイル』

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この何年も、インテリア関連以外の雑誌を購入することがありません。

全く読まないわけではないですし「これいいな!」と思うこともたくさんあります。なのにファッション雑誌を買わなくなったのはなぜだろう?たぶん自分の着たい物と方向性が違うからだと思います。

 

化粧品も一般のいわゆるカウンターでは購入しなくなってしばらくたつので、美容情報は熱心に仕入れない(敏感ですぐかゆくなってしまうため)。

コーディネートなども素敵だと思うけれど、知りたいのは「今の旬だけファッション」ではなく(雑誌だけでコーデする方はどうやってお金との折り合いをつけているんだろう?)、自分に似合う形や色の方に興味がある。

そう考えると、雑誌を買って眺めるのはほんの数ページだけであることがわかって、どんどん買わなくなっていきました。でも何か参考になるものがないと、決して生まれつきおしゃれではないわたしは、みずぼらしくなっていきそう…。そんな時に頼りになるのはやっぱり本でした。

 

あるとき本屋さんで見かけた美しい表紙の女性。中身をみて「これだ!」と思いました。わたしが知りたかったのは今の流行ではなくその人なりのスタイルを確立している生身の人。テーマは「グレイヘア」ですが、見ているだけで洋服とのコーディネート、生き方などいろいろな視点からその方のことを知ることができます。洋服を着ることがその人の個性をすべて表していて、それが本当に素敵なのです。

 

そして誰一人として同じスタイルの人がいない。自分の心地よさ、似合うを追求しているがゆえの素敵さでした。目指したいのはこの美しさだと思いました。やっぱりしばらく一般的な雑誌とは離れて、本で素敵な人を探そうと思った時間でした。

やっとみつけたキッチンスポンジ

以前お気に入りだった亀の子だわしのスポンジ。わたしにとって、色や耐久性などすべてが〇のものでした。

hon-nomushi.hatenablog.com

 

すごくお気に入りで何度も買おうと思っていましたが、一度切らしたときに近くで購入することができず。急ぎでパックスナチュロンのスポンジを使ってみたらこれが思いのほかヒットでした。値段は1つ150円くらい。いつ交換すればよいのかわからないほどへたらず安く、本当に優秀です。

 

ただ一つだけ気になったこと。色がピンクや緑だったのです。素材が優秀でもこの色はキッチンで悪目立ちするので、あんまり好きではありませんでした。

ですが先日ついに、白いパックスナチュロンスポンジを発見!

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ああ、これでもうスポンジ難民にならずにすみます。実は家族にとって色より何より、このパックススポンジが機能的に一番のお気に入りだったそうです。色が白になった今、家族全員満足。

 

ずっとこれを使うので、ぜひ作り続けてほしいなあと切実に願っています。めずらしく買いだめ(普段は全くしません)しておこうと思うくらいお気に入り。

迷わなくてよい買い物は、とっても幸せです。

 

 

 

 

 

あったことをわすれない 伊藤詩織『ブラックボックス』

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今まで紹介してきた本とは異なるノンフィクション。

 

作者は仕事で知り合った人に暴行され、その事実を自分で書き、本になったのがこの著書。ただ時間の尺度では過去のことだけれど、著者は何度も何度もその時間を繰り返し再生し生きて、この本を書かれたのだと思います。

 

作者が生きてきた時間。子どものころからジャーナリストになる夢を持って留学。自分でお金を稼ぎながら生きて、そして暴行に合った経緯も何も隠さず描かれています。暴行がそこまで1人の人を打ちのめすほどのものだということを、そしてすべてを根こそぎ変えてしまったその暴力さを、痛いほど感じました。そしてなかったことにしないために、本当にたくさんのことをしなければならなかったこと。ご本人だからこそ、語れた、たくさんのその後のこと。暴行は辛い事実だけれど、読むことで触れたこと、心が痛んだことを忘れずにいたいと思いました。

 

今でもそのような被害が起きることが、他人ごとではないことは親でもある私が覚えておくべきことなのだと強く思いました。決して向き合うのに簡単ではないけれど、顔も名前もさらけ出しながら1人の人がさらけだした文章は、忘れないために心に刻んでおくのに十分でした。そして苦しみがずっと続いている事実からも目を背けない、背けられないこと。

 

使っていなかったけれど、捨てなかったもの

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こてこて。昔よくあったようなデーンと石が主張する指輪。亡くなった祖母が昔々、私へと準備してくれていたものでした。20歳のプレゼントにといただいていたものだそうですが、20代にこのデザインは重すぎて、使うことなくしまったきりのものでした。

 

片付けを初めて使わないものを手放していくうちに、何度もどうしようか悩みました。

「使っていない」し、持っていても「わくわくしない」。手放すものに当てはまることがたくさん。ただ、いつものように処分することに抵抗がありました。街のジュエリー買取では土台の金しか評価されないのではないかという心配がありましたし、石自体の価値がよくわからなかったので、価格の査定に自信がなかったのです。

 

「わからない時はその道のプロに聞いてみよう!」

相談先として思いついたのは、婚約指輪もつくっていただいたZelkova K ジュエリーデザイナーのけやきさん。ジュエリーのことならけやきさんに、と心から信頼している方です。

++ Zelkova.K / ゼルコーバ.K ++

 

実物をけやきさんに送って確認していただくと、石が本当に美しいもので、なかなか手に入らない美しい珊瑚だということがわかりました。赤が美しくて手放すにはもったいないとのこと。それを伺って決心がつき、指輪からネックレスにリフォームしていただくことにしました。

 

デザイン画を送っていただき、最終的にこの形で決定。 

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(画像はZelcova.Kさんページよりおかりしています)

先端の丸いネジネジがロングチェーンの数か所についていて、ロングにもショートにもアレンジ可。美しいだけではなく実用的で、普段も惜しげなく使うことができます。

 

そしてとっても驚いたこと。

指輪の時は重い印象だった珊瑚が、ネックレスになったら生まれ変わったように生き生きしていました。初めてつけたときには祖母からの応援が石に込められているように感じて、涙が出てきたほど。きっとそれは錯覚ではなく、祖母がこの珊瑚に込めてくれた願いだったのだと思います。それを拾い上げて大切にリフォームをしてくださったけやきさん。お願いしてよかったと、心から感謝しました。

 

この先もずっと大切にする、でもたくさん「使って」一緒に過ごすこともできるジュエリー。生まれ変わったのは、かたちだけではなく「もの」そのものでした。ものとの新しい出会いは、形を変えることでも生まれるのだなあと実感したリフォームでした。