hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

日常に溶けている冒険ー石川直樹『いま生きているという冒険』

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素敵な作者を見つけました。図書館に陳列されていた本を見つけて、まずタイトルに惹かれたこの本。

世界中を冒険している作者の旅の記録がメインで、その写真が美しくて読みすすめていたのですが、実はこの作品のすばらしさは、旅ではなくそのあとを描いた章にあると思っています。

彼にとってはいつもと違う道を行くだけでも、旅であること。

本当は日常こそが旅であり、冒険。

秘境に行くだけを切り離して、冒険と考えない。

 

そんな言葉たちに出会ったときに、以前外国で暮らしていた頃のことを思い出しました。日々が全く違う日常に囲まれたときの心細さ、心地よさ、いつか帰るという限定の

日々だったからの、非日常の体験。見知らぬ土地で暮らすという(ただし、仕事をしていないから本当の生活ではないけれど)体験で、自分がどこに楽しみを感じていて、うれしくて、悲しかったのか。そのあたりはずっと言葉にできなくてもやもやしていたのですが、石川さんの言葉に出会って、日常と冒険が一緒に感じられたからあの日々を忘れられないんだとわかりました。

 

いつもどこか遠くへ行くことが大好き。でも観光して、美しい場所をみただけではなんだか物足りない。もっとその土地の生活を丸ごとを体験して、もっと長くいろんな場所に住んで、その場所で自分のすべての感情を体験したい。そんな風にいつも思います。

 

でも今生活している場所にずっといるかどうかなんて、本当は誰にもわからないこと。だとしたら住んでいる今の街での生活も、自分が望んで体験していること。

日常もまた冒険になりえるということを、はっきりと言葉にしてくれた本です。

この生活に溶けている冒険を発見し続けたい。