4月になり、我が家の周りでは桜が美しいです。
まだ肌寒い3月中、偶然図書館で出会った梨木さんのこの作品。
新しい生活の始まる今、ぴったりの作品でした。
梨木さんの本は依然もここで紹介しましたが、どうしてここまで登場人物の気持ちをわかり、言葉にできてしまうのか。いつも羨望のまなざしで小説の世界を見ています。
主人公はまだ若くして赤ちゃんを産んだ雪。そしてまだ赤ちゃんの珊瑚。珊瑚を見知らぬ人に預かってもらうところから話は始まります。
見知らぬ人、くららは料理がとても上手!奇をてらうような食事ではなく、普段あるものがしみじみおいしくなるような工夫をされて、食卓に上っています。その料理が登場人物の一人のように、存在感があります。
そして赤ちゃんの珊瑚もまた、まだ言葉を発しないけれど、深く強く、このストーリーの中に存在しています。赤ちゃんとお母さんの関係も、ただ動くだけでたくさんのストーリーを発していて、それを作者はしっかりと描いているから、赤ちゃんの珊瑚すら全くおろそかにされていないのがわかります。
作者は本当に料理も含めて、主人公全員を愛しているんだなあと感じられて、安心して本のストーリーに身をゆだねられます。そして、この小説の世界を深く堪能させてもらった後、心地よさに感動して、涙が出ました。一文に感動して、というのではなく、ただ思わず涙がでちゃった、という状態でした。きっとわたし自身も、4月から新しいことが始まる前だったので、恐れずに挑戦する雪に刺激を受けたのもあったのだと思います。
良い本に出会うことは、人生のギフトだなあといつも思います。