hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

むき出しの人間らしさー宮本輝『田園発港行き自転車』

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ひさしぶりの宮本ワールドに、どっぷりつかりました。宮本輝さんを知ったのは、本屋さんで「む」の段を探していて、「み」のところで輝さんの『ここに地終わり、海はじまる』を見つけ、そしてはまったという偶然のたまもの。内容が素晴らしかった。

いずれご紹介しますね!

 

さてさて、肝心のこの本。

宮本ワールドは、いつも人間の気持ちの移り変わりが丁寧に描かれていると思うのですが、素直な描写のそれぞれが人間臭くて、うそがないと思うのです。

この本も理想のような父親の別の面を知って嫌悪感を持つ主人公や、子どもが産まれたことで覚悟を決めた男性がいたり、ささいなことで怒る人など、あらゆる立場のあらゆる感情がすごく丁寧に描かれています。でも、読んでいてへきえきしないさじ加減が素晴らしくて、人間臭いわりに登場人物の誰も嫌いにならないのです。

 

そして、舞台は富山。表紙に舞台となる場所の地図が載っていて、旅気分も味わえます。最近日本の各地をめぐるのを楽しみにしているのですが、まだ行ったことのない富山にとても惹かれました。頻繁に舞台となっているその場所に行って、景色を見てみよう!と楽しみができました。

 

小説からヒントを経て旅へ、というパターンはわりと多いのですが、宮本輝さんの小説からヒントを得るのはこれが初めてではありません。私にとって、旅の行き先を決めるきっかけとなることの多い作家のひとりです。この本をきっかけに、次の国内旅行は富山に行くことにしました。まだ日程等は妄想ですが。