hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

あの日をいろんな角度から 穂高明『青と白と』

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3月11日のあの日を、強烈に思い出す本を読みました。

はじめの章の主人公は仙台出身の小説家の卵。東京に住んでいるのですが、家族は仙台に住んでいるという設定です。3月11日の地震を東京で感じた小説家の主人公は、すぐに東北の家族と連絡を取ろうとしますが、なかなか通じません。穂高さんの他の作品のように、章によって主人公が変わり、同じ出来事をほかの角度から見せてくれます。

 

この作品のすごさは小説家である主人公の住む東京と東北の温度差を書ききって感じ取れるようになっているところだと思います。そのずれは今だに続いているのだと思いますが、読んでいてとにかくはがゆさも感じました。当事者なのと、遠くで見守るのと、どちらのつらさも描かれていて、歯ごたえのある読書でした。

 

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穂高さんの作品は、『かなりや』に出会ってから見かけると必ず読むのですが、どんな主人公でもどんな気持ちも、もらさず丁寧にくみ取っているところが好きです。無視されない心の動きをたどる読書は、とても安心させてくれます。この本の主題はとても重かったけれど、一読の価値がある読書でした。