hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

読み返し、続きのある喜び 梨木香歩『西の魔女が死んだ』

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西の魔女が死んだ

なんて衝撃的なタイトルでしょうか。児童書研究の論文を読んでいた時、子どもと死に関する本の中にこのタイトルがありました。タイトルゆえに忘れられなくて、それから手にとった梨木さんの本。最近行った図書館の大人むけコーナーで、再び同じ本に出会いました。装丁が違うと児童書とは全く違う印象の1冊。

 

読んでみると、以前出会った時とは違うところが響きました。例えばおばあさん(=西の魔女)の丁寧な暮らし。まいが悩んでいることへのおばあさんの対応。暮らし方や人との接し方。以前読んだときはわたしもまいのようにお隣のげんじさんは苦手で、どうしておばあさんがおだやかに接することができたのかわかりませんでした。でも今は少しだけわかるような気がして。少しずつ違った視点でまた新たに体験しなおした感じがしました。

 

うれしいのは続きが書かれていること。まいと家族との新しい物語やおばあさん自身が語り手となって物語る新たな章が加えられていました。読み返して新しい章が加えられていると、それだけでなんだか嬉しくて。よく知る大好きな人のその後を聞いた気持ちになりました。読書に続きがあることは、本当に喜びです。

 

最後に印象的だったのは、作者自身の言葉。あとがきには「出版したときは自信がなかったけれど今この作品を読み返すことで、大きな声で語らなくても大切なことを伝えることができることに自信をもっている」というようなことが書かれていました。時間をかけ、作者自身が自分の書く力の成長を感じていらっしゃるのが印象的でした。仕事は違えどもこんな風に自分を成長させていきたい、そんな実例でもあると思いました。

大人の方にはぜひぜひ、こちらの装丁の方をおすすめします!