hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

気持ち良さの先にある共存 高田宏臣『土中環境』

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いつもとは毛並みの違う一冊ですが、とても素晴らしい本だったのでご紹介します。

 

最近子どもと森で遊ぶプレイパークに参加しているのですが、

森に行くのが気持ちよくて楽しい、と思うようになりました。

関東に住んでいた時に山の手入れ活動を始めた家族のおかげで、

「山は虫がたくさんで怖い」

「山は、登山をする人だけが行くところ」

というわたしの森へのイメージが、実際に森に入ることで

親しみを感じる場所へと変わっていきました。

子どもも自然育児の保育園で育ち、

土に触れお天気と遊び、自然の中で生きる彼らを見て、

心から自然と人とのつながりを感じられるようになりました。

そしてわたし自身も、食から入った環境の問題を自分事として捉えるようになり、

自然環境がいかに人間の生きるに関わっているものか、深く知るようになりました。

 

その森や、川や、海が、今本当に荒れ果ててきていることを

この本を通じて知りました。

 

実は今家の前に見える大きな森林の一部が削られ、

コンクリートの壁で固められようとしています。

そのやり方が本当に人の安全を守ることになるのか、

森の他の部分にも傷を負わせることにならないかと、

この本を読んで深く考えこむようになりました。

 

作者は造園会社を持ち、土地の本来の力を活かす造園をすることで、

その土地の植生を手助けし、自らの力を発揮できる土地づくりをされている方です。

そのやり方は本当にシンプルで、人間の身体と一緒。

様々なもののめぐりを、整えていくやり方です。

土中空気がよどんでいる所があったら、その流れを変える。

水の流れがよどんでいたら、そこを様々な方法で流れさせる。

 

わたしは特に造園などのプロでもないし、文学少女が大きくなっただけの文学青年(?)ですが、それでも本の内容は腹におさまりました。

一般的に自然環境に興味のない方にもぜひ手にとっていただきたいと思う理由は、

この本の写真や図を見るだけで、流れのある場所の美しさが通じると思うから。

気持ちの良い場所かどうかという、シンプルな快不快が、

写真を見ただけで、人には伝わるものなのではないかと、

わたし自身が深く思ったからです。

 

実際に昔の人たちは、水源にあたるに祠を建てたりすることによって、

そこの場所を守ったり、大切にしていたそうです。

その感覚を「昔の感覚」だとか「失われたもの」、

はたまた「自分にはわからないから」と簡単にあきらめるのではなく、

「気持ちの良い場所だから大切にしよう」と、

自分たちの感覚を信じて大切にしていくことができるのなら、

もっと森と海と仲良くなれるのではないか。

そんなことを考えた本でした。

 

そしてわたしの家族がこの春、自然環境を考えるフォーラムに賛同しています。

森里海を結ぶフォーラム (google.com)

もしよかったらのぞいてみてくださいね。