hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

味わい何度もかみしめる

ドラマから興味を持って カリン・スローター『彼女のかけら』

読むのに少し時間のかかる本のご紹介が続いています。 『彼女のかけら』。 以前Netflixで見たドラマの原作です。 人は身近な人のことを本当に全部理解しているのだろうか? 知っているのだろうか? という問いかけが恐ろしく、胸に突き刺さる小説でした。 主…

種というちいさな記憶体 岩崎『種をあやす』

長崎の小浜温泉近くに、タネトという野菜の直売所があります。 プラスチックフリーで地元の元気な野菜を扱っているところ。 そこによく岩崎さんのお野菜があって、種取り農家さんという存在を 初めて知りました。 なるべく野菜は元気なオーガニックのものを…

遊びは生きるかて 西川正『あそびの生まれる場所』

日本の子育てを経験していて、 ほんとうに閉塞感を感じます。 電車やショッピングセンターにいる赤ちゃんたちは、 たいていスマホ漬け。 なかないため、親のため?もあるだろうけど、 一番は赤ちゃんが泣くと生まれる まわりの見えないちくちく視線なのでは…

次の動きを見据えて学び ジェイソン・ヒッケル『資本主義の次に来る世界』

今週は月曜日まで旅に出ていたので、ばたばたしていました。 普段は単身赴任の家族も家にいて、 なんだかスケジュールがぐちゃぐちゃ。 ようやく落ち着いてブログを書くことができます。 さて、今回の本は小説のように読みやすいものではなく、 経済の本です…

たまに古典と触れ合う オスカー・ワイルド『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』

オスカー・ワイルドという作家をご存知でしょうか? きっと大学で英文学を専攻された方などは、ご存知なのではと思われます。 言わずと知れた古典の1つですが、 古典というのは何ともとっつきがたいもの…。 読みにくい訳に古語が混じって、本の本質を理解す…

絵画と小説の出会い 原田マハ『暗幕のゲルニカ』

いや、おもしろかった。 夢中になって読みました。 『三体』(以前のブログにあり)を最近読破したので、 図書館をうろうろして読みたい本を探していたところ、 原田マハさんの作品に出会いました。 以前彼女のモネを題材にした本を読んだことがあったので …

新しい占いとの向き合い方 石井ゆかり『3年の星占い 蠍座』

11月10日。今日発売の本です。 予約で購入しておいたので、 夜中の0時に端末にダウンロードされていました。 開店を待ち本屋さんに行って本を購入する時代から、 欲しい本が朝起きて家ですぐに読めるなんて、 時代は変わりました。 けれど、読み方や本との関…

仕事を客観的に見る 小川洋子『そこに工場があるかぎり』

以前から知ってはいたのだけれど、しばらく手に取らずにいた 小川洋子さんの工場めぐりの本。 最初の工場はとにかくものに穴を開ける工場。 軽い気持ちで読み始めましたが、なんだかところどころに 自分と仕事との向き合い方にがつんとくる文章がありました…

とにかく稲垣さんの本ばかり 稲垣えみ子『アフロ記者が記者として書いてきたこと。退職したから書けたこと。』

今夢中になってひたすら読んでいる稲垣さんの本。 きっかけは『家事か地獄か』という一冊と出会ったことでした。 朝日新聞で記者として働いていらしたころの稲垣さんの記事は、 身に迫るものがありました。 原発に反対しながらも、結局のところ電気が(たく…

違和感の存在を言葉にする 西加奈子『くもをさがす』

しばらく原稿書きが忙しくて、ブログを書けずにいました。 後回しにしている仕事もあります…。 片付けながらゆっくり更新します。 この本、書評などで見かけて読みたいなあと思いつつ、 図書館ではものすごい予約数で、あきらめかけていたところ ローカルな…

わたしも! 稲垣えみ子『老後とピアノ』

本の写真をすっかり取り忘れてしまって…。 写真ナシのさびしいブログになりますが、 ぜひこの本について紹介させてください。 実は、わたしも! 50歳になったらピアノをやってみたいんです。 だから、この本を見た時、同じことを考えて体験された方がいる! …

独特の読書感 津村記久子『水車小屋のネネ』

単身赴任中の家族の家に行ったら、机上にこの本が置いてあって、 つい読み始めたら止まらなくなってしまいました。 日本の作家の長編はあまり自分で手に取ることがないのですが、 なんというか独特の書き方にはまってしまい、 最後までじっくりしっかり読み…

一歩一歩のその先にあるもの ジェームズ・ボーエン『ボブがくれた世界』

ネコ好き、イヌ好き、そんな人ならついこのマフラーを巻いた猫に 目が行ってしまうことと思います。 わたしは猫が大好き。今は飼ってはいませんが、 実家にいた時とっても大事にしていた猫がいました。 そんなわけで表紙を見て手に取ってみたのですが、 この…

装丁の美しさ、物語の深さ 劉慈欣(りゅうじきん)『火守』

しばらく暮らしが落ち着かずにいましたが、 毎週の図書館通いが戻ってきました。 新しい図書館に通うようになって見つけたのは、この『火守』。 それほど大きくもなく薄い本ですが、装丁の美しさにまずは目を奪われ、 そして物語を読んでみたら神話のような…

詩人の生きてきた道 伊藤比呂美『道行きや』

『今日』という、赤ちゃんのお世話をする親の一日をうたった詩をご存知でしょうか。 www.fukuinkan.co.jp この赤ちゃんを育てている人にそっと寄り添ってくれる詩を 翻訳された伊藤比呂美さんの本を、書評で見つけて読んでみました。 「今日」という詩と出会…

傷ついた体験を本という場でわかちあう 光野桃『実りの庭』

大好きな光野桃さんのエッセイ。 中学生の時、どれほど光野さんの描くイタリアの美しい女たちに 憧れたことか…。 大学生の頃まで、光野さんのエッセイは本棚の大部分を占めていました。 その後少したって、文庫にしたり手放したりして、 いつの間にか少し距…

何でもない日常が小説になるとき レイモンド・カーヴァ―『大聖堂』

ずっとずっと、名前は知っているのに読んだことのない作家はいるもの。 こんなに毎日本に触れているのに、それでも読みつくせない。 きっと人との出会いのように、本との出会いにもタイミングがあるのだと 思うのです。そうして今読んだことのある作家になっ…

静かな本 ナン・シェパード『いきている山』

図書館の新刊本コーナーにひっそりとあり、 この美しい表紙に魅せられて借りてきました。 作者は1893年、スコットランドに生まれ、 1981年に亡くなっているナン・シェパード。 1944年ごろ書かれたこの作品は日の出を見ず、 1977年にようやく出版されたのだそ…

本の厚さと現実逃避 ヒラリー・マンデル『ウルフ・ホール』 

試験前になると急に机のまわりを片付けたくなる学生のように、 現実でちょっとしんどいやることがあるとき、 わたしは分厚い長編へ挑むくせがあります。 本当はこんな分厚い長編に逃げているどころではないのだけれど…。 世界史でクロムウェルという名前を耳…

料理、環境、わたしたちの生活 有元葉子『簡単料理は簡単か?』

このタイトルを見たら、お料理に興味がある方が手に取られることが 多いかもしれません。著者も料理家の有元さんですし。 でもこの本は、実は環境の本です。 今わたしたちの地球が大変なことになっている現実。 それを台所の物からつなげて考えて、 しいては…

こんな風に一日を記録したい いせひでこ『気分はおすわりの日』

「あ、この絵!」 と見ただけで誰の絵かわかる、細い線のスケッチ。 いせひでこさんの犬との暮らしをつづった本です。 この本の前作に『グレイがまってるから』という本があるのですが、 そのタイトルがとても記憶に残っていて、ようやく手に取りました。 わ…

沖縄から政治を考える 玉城デニー『新時代 沖縄の挑戦』

義母が移住した関係で、沖縄に毎年行くようになっているここ数年。 青い海を楽しむだけではなく、もっと沖縄の文化を 知りたいと思うようになっています。 そして以前であったこの作品たちを読んで、 hon-nomushi.hatenablog.com ただ観光地として訪れるだけ…

起こってほしくはないけれど こさささこ『ある日突然オタクの夫が亡くなったら?』

この本を手に持ったまま、マンションのエレベーターで家族に会ったら なんだか気まずかったのですが…。 ある日Pinterestで表紙を見て、ぜひ読んでみたいと思った1冊。 大切な家族が亡くなる日なんて、考えたくもないけれど、 現実は今日も明日も生きている保…

絵に魅かれて物語を紡ぐ ローレンス・ブロック編『短編画廊』

こんな魅力的な本があったなんて。 2019年に出版されていたこの本は、ピンタレストで出てきました。 アメリカを代表する画家エドワード・ホッパーの絵から 17人の作家が物語を紡いだ短編集です。 ホッパーの絵が大好きなので、迷わず読みましたが、 それぞれ…

島で読みたかった本に出会う ブレイデイみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

このとっても魅力的なタイトルに惹かれつつも、 ずっと読む機会がなかった本。 一度見たら(知ったら?)忘れられないタイトルのこの本は、 読み始めてみたら、子どものこと、自分の持っている偏見のことなど 深く自分に突き刺さる問題がたくさんありました…

少し怖い そのさじかげん ロバート・ウェストール『真夜中の電話』

時折新刊の本には、出版社の新刊案内がはさまれていることがありますが、 この作品はその案内の中から見つけたものです。 表紙の絵を見てはっとされた方もいらっしゃるかもしれません。 宮崎駿さんの絵が表紙です。 一目見るだけで誰の作品かわかるというの…

土に触れる幸福 スー・スチュアート・スミス『庭仕事の真髄』

新聞の下に、時折本の広告があるのをご存知ですか? 時おりチェックしては、気になる本を見つけています。 そうして見つけたのが今日の1冊です。 私自身、今は自然農や庭のことに興味があるのですが、 以前は全く自分がやるというところまで関心がありません…

子どもの頃から好きな本 安房直子『なくしてしまった魔法の時間』

安房直子さん。 子どものころ、外国のお話にしか興味がなかったわたしが、 唯一といっていいほど読んでいたお話が安房さんのお話でした。 今でもそのころから持っていた2冊が本棚にあって、 時折読み返しています。 すぐれた児童文学作品は、ほぼ全ての作品…

遠い国と自分の国を想う デール・マハリッジ『コロナ禍のアメリカを行く』

"Fucked at Birth:" この表紙のタイトルが目に飛び込んできて、 思わず読んでしまった作品。 訳者はこの言葉を「産まれた時からどん底」と訳されています。 作者はアメリカのジャーナリスト。貧困問題の記事を書く作者が、 コロナの中で貧困にあえぐ人々の様…

しっかり読み込みたいエッセイ 寿木けい『泣いてちゃごはんに遅れるよ』

何気なく図書館で見かけた本。 著者の方も表紙の絵のことも全く知らずに、タイトルだけで 手に取った本でしたが、軽い気持ちで読み始めたわたしは 何度も深く心を指されたような読書になりました。 著者は料理家でエッセイスト。彼女の作品は初めて手に取り…