子どもの頃から読んでいる、(わたしにとって)長い付き合いの作者が新しい作品を発表していると、心の底からワクワクします。この作品の作者、カニグズバーグの作品とは小学校からのお付き合い。
『ムーンレディの記憶』は2008年に出版されたものなので、決して真新しい作品ではないのですが、図書館の児童書コーナーで子どもとうろうろしていて、偶然見つけたもの。読んだことのないカニグズバーグ作品を見つけ、心が躍りました。
この作品を読んでいて、登場人物の名前をなんだか知っていると思ったのは当然。
カニグズバーグの書いた、
『スカイラー通り19番地』
『影 小さな5つの話』
の作品と同じ登場人物が出てくるのです。
作品は、主人公が引っ越してきた家の隣に、昔の有名人だった元オペラ歌手が住んでいて、彼女が家財道具を売り払う準備をしているところから始まります。家財道具の中に有名画家の作品ではないかと疑われる絵が見つかるのですが、それが登場人物たちの過去と複雑に絡んでいくというストーリーです。
この作品のすごいところは、隣に住む今では落ちぶれてしまった元歌手の過去と、
大戦時代の時代背景、そして今に生きる主人公の若者とその家族の時間を
時代を絡めながら描いてリアリティのあるものにしていること。
そして様々な生きている、生きていた人の時間を、
作品の中で交じり合わせている点だと思います。
同時に家財道具を売り払う最中でなければ、主人公と隣の女性は
ただ隣の人としてしか主人公の頭の中には存在しなかったのでは。
そこに人と人との関わり合いの面白さ、怖さがあるのだと思いました。
冒頭のカバーに、
人の90パーセントは目に見えない。
人間というものはもっと見えているつもりかもしれないけれど、
10パーセントしか見えていないの。
という引用があるのですが、
この引用部分に読み切った後、深くうなずきました。
ミステリーを解くような気分で読み始めたらきっと止まらずに、
勢いを持って読み進めてしまうこと請け合いです。
新年の読書にぜひどうぞ。