hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

人が暮らす場所 小林奈穂子『生きる場所を、もう一度選ぶ』

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このタイトルを見て、まさにわたしは

「そうだ、生きる場所をもう一度自分で選びたいんだ!」と

強く思っていることを実感しました。

 

わたしは小学生の頃から読書のおかげで外の世界にあこがれ、

高校生からは早く家を出るために地方の大学を狙い失敗)、

その後ようやく結婚を機に地元を離れ、

それから一度も地元に戻りたいと思ったことがありません。

できれば転勤族になりたいくらい、引っ越しが大好き。

 

幸い家族がいろんなところで仕事をする経験があり、

関東内をうろうろと。

一度は単身フランスに住む機会もありました。

九州も、縁あって住むことができました。

だけど、実は一番住みたいと思っているカナダに

住んだことが一度もないんです。

住みたいと思う場所に、外国人の友達の多くが

結構自由に行き来しているように見えるのに、

なぜわたしにはできないんだろう?

とずっと思っていました。

 

そんな時、国内ですが移住をされた方のこの本を読んで、

ほんとうに人は好きな場所、住みたい場所に住めるのだなと

心から思った次第です。

なりゆきやいきおい、やってみたからわかることなど、

移住された方だからこそわかることがたくさん。

そして、皆さん定住する方ばかりではありません。

人生は、続くもの、変化するものだから。

 

今いる自分の場所が好きじゃないのだったら、

人は自分で人生を選ぶ権利があるのだから、

やってみるといいよ、と

背中を押してくれるような、そんな一冊です。

 

来週、再来週は旅のため更新はお休みします。

 

行きたい場所に行くと決めること 渡貫淳子『南極ではたらく』

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以前、ごみを減らす暮らしの本を読んだときに、気になっていた渡貫さん。

南極で料理人として働かれていたとき、コーヒーすら排水溝に流せないと

伺って、南極の生活に興味を持っていました。

 

ようやく読めた1冊。

難局に行くまでの試験や、なぜ行こうと思ったのか、

そしてもちろん南極滞在中の話も書かれています。

本を読むまで南極にどんな人が暮らしているかなんて、

考えたこともありませんでした。

彼女の本を読んで、体験することがないだろう

南極の生活を充分に味わいました。

 

本を読んで、

彼女は本当にプロの料理人なんだな、と

つくづく感じました。

一年分の食料を持ち込むために計算をする、

だとか、やっぱりその道で勉強されてきた方だから

できることなのだと思います。

 

もうひとつ印象的だったのは、やりたいと思ったことに挑戦する気持ち。

家族がいてもなんでも、自分が今ここでしかできない経験をするという

その気持ちが素敵でした。

特に日本は母親になると色々透明のうるさい目が気になるところ。

そんな中、りっぱに仕事をやり遂げた彼女に拍手!

 

行きたいところに行くと決めることが、

やっぱり前進するかぎだな。

人生のヒントをいただきました。

わたしのこと…HSP 時田ひさ子『かくれ繊細さんのめんどくさい疲れを手放す方法』

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先日、子どもが腕を骨折したときのこと。

行きつけの整体院で、子どもの治りははやいけれど、

わたしのからだの状態があまりにも悪くて驚かれたことがありました。

どうも、子どもの不調を引き受けてしまったみたいです。

(怪しいと思われる方もいらっしゃると思うけれど、

人は何かしら影響を受け合いながら生きているものだと私は思っています)

 

そんな中、たまたま図書館の新刊で手に入れた本を読んでいたら、

わたしにも家族にもまあ、当てはまる当てはまる!

わたし自身もHSPだったんだなと、初めて認識しました。

 

HSPとはかなり繊細で認識領域が幅広く、

それを周りに悟らせないような態度を取ったりする人のことだそうです。

つまりかなり敏感ながらも社会的には大丈夫な人と思われている、

ということです。

まさにわたし…。

読んでいてようやく認識しました。

 

そしてこの本の優れたところは、

すでに病院で治療をされている方は、きちんと専門医と

取り組むようにと書かれていることです。

もちろん、様々なHSPの状況への対処は書かれているのですが、

それ自体だけを進めるのではないところに共感を覚えました。

 

わたしは治療を受けるところまではまだ行っていないので、

この本のワークにいくつか取り組もうと思っています。

失敗に過剰に反応してしまうことがあること、

自分でも認識していましたが、

認知する範囲が大きいからという説明に

ふむふむと納得しました。

 

ちょっと敏感すぎて疲れるという方に、

ぜひ一読して頂きたいな。

少しでもこの本を知って楽になる方が増えますように。

学校って… 工藤勇一 鴻上尚史『学校ってなんだ!』

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先日教育に関するテレビを観て、そのあと気になっていた工藤さんの本を

読みました。

著者のおひとりは公立の学校の改革をされ、

そして今は横浜の私立学校の校長先生をされています。

 

わが家は子どもが公立に馴染めず苦しんだ経験から、

関東にかえってきてからは少人数の私立に通っています。

けれども自分は教育関係者で、去年から

公立の学校で働いています。

だからこの本を読んでみようと思いました。

 

今、働いてみて思うことは、自分が通っていたころの中学校と

あまり変わっていないのがなんともはがゆいところ。

さすがに暴力はないけれど、

一斉授業が成り立たなくなってきているのではないかな?

と思っている所です。

 

それに加えて今気になっているのは、

色々な特性を持つ子どもたちへのケア。

そして変わらない校則。

時代は変化しているのだけれど、

先生方の負担は増え、リスペクトは減り、

子どもたちも疲れている。

 

この本で言われている対話、言語化を、

もう少し現場で取り入れていかないと、

生徒も先生もお互いに苦しいんではないかな、と

個人的に思っています。

今の教育に疑問を持った方にはぜひ

読んでいただきたいです。

 

 

(番外編)映画「モンタナの風に抱かれて」

eiga.com

 

古い映画を観ました。

お休みの午後、ゆっくりと。

 

何度も観たことのある映画なのですが、

大好きなクリスティン・スコット・トーマスが出ているので、

事あるごとに見返しています。

クリスティンの演技や雰囲気が大好きなので、

彼女の出ている映画はたくさん観ているのですが、

DVDを持っているのは「ランダムハーツ」だけ。

だからたまに借りてきては作品を見返します。

 

ニューヨークで有名なファッション誌の編集をしている彼女は、

事故の恐怖から狂暴化した馬の治療のために、いちるの望みをかけて

ホース・ウィスパラーにお願いすることに。

ニューヨークには来ないという彼に会うためにモンタナへ向かい、

そこで娘との関係を再び構築し直したり、

自身の心の素直な動きから、恋に落ちたりします。

 

元はビデオの時代の映画なのですが、

全体的にはすごく静かな映画です。

だけれども、風景も美しいし、描かれている人物も、

どこをとっても深く現実味があって大好きです。

今回は、傷ついた娘と向き合う母親の姿が印象的でした。

ティーンに近づいている我が子との関係を考えながら

思い返しました。

 

日本語のポスターでは母親の恋が前面に押し出されていたけれど、

わたしの印象は上の通り景色の美しさとティーンの娘と母の関係。

どこに主題を置くかは見る人次第ですけれど、

どの場面を観ても心に触れるところが大きな映画だと思います。

 

機会があったらぜひ。

静かな午後の映画にお勧めです。

 

 

 

気負わない旅の記録 益田ミリ『考え事したい旅』

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モンサンミッシェルの本を探していて、

図書館で普段行かない書架に行ったら、

素敵な旅の本をたくさん発見!

しばらくは旅の本についてばかり書いてしまうかもしれません。

 

第一弾は、益田ミリさんの気負わない、フィンランドの旅の本です。

何年かにわたり旅をされたフィンランドの旅。

カフェにいったり、エストニアに旅したり、

合間にスーパーでおいしいものに出会ったり。

 

益田さんの文章は、なんというかひっかかりがなく、

がんばらせようとする感じがなくて、

それでいて心に残るのです。

だから、本当に夜寝る前に読むのに最適で、

彼女の本と一緒だと

一日を小さな笑顔と期待で締めくくることができるんです。

「明日何かいいこと、見つけよう!」

というような。

細かいけれど、わたしが強調したいことは

’明日いいことあるといいな!’という

他力本願をしたくなるのではなくて

”自分の中で”いいことを見つけよ、

という気持ちになることができる、ということ。

もう2回も読んでしまいました。

どこかに一人旅したくなりました。

 

余談ですが、

エストニアに行くのにフェリーに乗ったと描かれていて、

日本のフェリーを想像していたわたしは、

本の中の写真を見てもうびっくり。

なんとスタイリッシュで美しい船なんでしょうか!

日本とは生活のなかの美しさの意識が、

まるで違うことに驚愕します。

美しいことの価値がもっと日本で広まればいいのになあ。

でもそれを知ることも旅をして体験をするからこそ、ですね。

 

世界の果てをみてみたい 井形慶子『英国セント・ギルダ島の何も持たない生き方』

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ミニマリストの本かな?と思いながら手に取ってみたら、

今は人の住んでいない無人島から人が引き上げた時のこと、

その前の島の歴史について書いた本でした。

 

著者はイギリスについてたくさんの著作がある方。

まだわたしはイギリスに行ったことがないのですが、

メアリー・ポピンズからパディントンまで大好きな本がたくさん!

だからいつか行ってみたい、と強く思っているのです。

旅リストの優先順位的には高くはないのですが。

 

そんな中、ミニマリストの本かと思って手に取ってみたら、

まあ著者とこの場所の出会いの面白いこと。

そしてこの本を書いてくれと、最後の住民たちから

言われたかのような不思議な出来事が綴られていて、

場所と人との不思議な出会いにも思いを馳せました。

 

あるスピリチュアルな方に、

「行ってみたいと思うところや行ってみたところ、というのは

前の魂がすでに旅している所」

と教えていただいたことがあります。

場所とも不思議なご縁というものがあるようで、

もしかしたら場所についての本を書くときも、

様々な魂に導かれて書くものなのかもしれません。

 

海の中の孤島のような生活の厳しい島で、

危険な漁をしながら暮らしを立てていた島民。

その後生活の変化、様々な時代の変化に対応しながら、

最後は島を引き上げるという選択をした人々。

 

著者の丹念な調査と温かなまなざしも感じられる、

ただの旅行記とは一線を画した一冊だと思いました。

普段は図書館に静かに眠っていて、

気になる人にだけ本から手をのばしてくれているような、

そんな本でした。

 

知らない場所が大好きな方に、ぜひおすすめしたいです。

今は失われてしまった、誰かの大切な場所に

本を読むことで旅をすることができます。