hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

Falling love with 主人公

心の動きを丁寧に追う小説 群ようこ「れんげ荘物語」

群さんの小説が大好きなのに、読んだことがなかったれんげ荘の物語。 先週のひととき、シリーズ全冊を楽しみました。 主人公は40代。 それまで嫌なことをして働いて、 気の合わない母親との生活をしていた彼女は、 仕事を辞めて働かないで暮らすために、 月…

時にやさしい本を手に取る 井田千秋『家が好きな人』

勤務先にあって、「あ!」と思った本。 本のタイトルを新聞の帯で見つけた時から読んでみたかったんです、 この本。 中は漫画とコミックエッセイとの中間のような、 範囲が少しあいまいな本だと思います。 中は同じアパートに住む住人の、それぞれのインテリ…

ケストナーへの深い愛 ケストナー『エーミールと三人のふたご』

ケストナー作品と出会ったのは小学生の頃。 夢中になって読んだ『ふたりのロッテ』、もちろん『エーミールと探偵たち』も! なのにこのふたごの本だけは、今まで読んだことがありませんでした。 良く通っていた図書館になかったのかしら? でも、このタイミ…

LGBTQの描き方 原田マハ『ロマンシエ』

いつも一定の火曜日または水曜日、 そして金曜日にブログを書く予定でいるのですが、 最近週中が忙しくて、ブログが書けない時が続いています。 なかなか定期的にUPできずに、ごめんなさい。 少し落ち着いたので、来週くらいから定期的にUP できるようにした…

いつか外国語で到達したいところ 李琴峰『透明な膜を隔てながら』

美しい日本語を読みました。 李琴峰さんという作家の方をご存知でしょうか? 台湾出身、つまり日本語は第二言語。 なのに、なのに、 なんて美しい日本語を書かれるのだろう。 読んだとき、心が震えました。 というのもわたしも外国語学習者だから。 こんなに…

絵から生まれる物語の宝箱 ローレンス・ブロック編『短編回廊』

あけましておめでとうございます。 簡単におめでとうと言えないお正月でしたが、 それでも日々は過ぎていく。 できることをできる範囲でやっていきます。 本の時間もいつもより短めでしたが、 そんな時に最適なのが短編集。 以前ご紹介したこの関連作品。 ho…

季節で読みたくなる本 田辺聖子『シクラメンの窓』

駅に近づくとき、郊外の私鉄電車はスピードを落す。手前のカーブがきついので、線路すれすれまで建った家々の軒を掠めそうになる。やがて駅へすべりこみ、するとホームを隠すような看板で、もう家々は見えない。産婦人科、金融、海老料理店などの看板がつづ…

意識する、目に入る 原田マハ『さいはての彼女』

原田マハさんの作品を読み続けたくて、 別の本を借りてきました。 読んでみたらびっくり! 最近知り合った方が関わっているハーレーダヴィッドソンという バイクにさっそうと乗る女の子の話、 訪れたことのある北海道の鶴居村が舞台になっていたりして、 一…

ごほうび読書 リウ・ツーシン『三体』

以前『火守』を読んでから、 ずっと楽しみにしていた『三体』シリーズ。 色々が片付いてようやくほっとした秋のはじめ。 ついに、読み始めました! 中国の文化革命から始まり、 科学者たちが謎の死を遂げる展開に。 そして宇宙との交信から、地球全体がパニ…

思いがけないところに着地 ギヨーム・ミュッソ『パリのアパルトマン』

一見平和な題名ですが、 実は複線のたくさんある推理小説でした。 そして、かなりどきどきする。 アメリカの脚本家と、イギリス人の警察官がたまたまハプニングで 同じ時期に貸しマンションを借りてしまった。 2人とも以前のマンションの持ち主である、 元ス…

須賀敦子の言葉を味わう アントニオ・タブッキ『遠い水平線』

『遠い水平線』。 この表紙とタイトルの装丁にひかれて、手に取ってみた本。 まるで写真集のような、美しい装丁に心が躍ります。 中身はアントニオ・タブッキというイタリアの作家の作品で、 とりとめのないような物語が展開していきますが、 でもそのあいま…

事件解決だけではない面白さ へニング・マンケル『手/ヴァ―ランダ―の世界』

お正月、何もない自宅に持ち込んだ本に心が動かなくなってしまって、 とうとう読むのをやめてしまいました。物語の筋はある程度面白かったのに、 なぜか読み進められなくなってしまったのです。 これはわたしにはめったにないことで、自分でもびっくりしてい…

みずみずしい作家のエッセイ くどうれいん『虎のたましい人魚の涙』

れいん→Rain?→玲音。 くどうれいんさんのお名前を初めて知りましたが、 昭和生まれの頭のなかでは上のような変換をしていました。 お名前からもわかる通り、若い作家の方のエッセイです。 なぜ予約したのか、きっかけを忘れてしまったのですが、 すてきなエ…

編み物とウイスキーと 三國万里子『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』

なんて素敵なエッセイなんだろう。 文庫になったら絶対手に入れよう。 読み終えた時心からそう思いました。 編み物作家の三國さんの、初のエッセイだそうです。 ご主人と出会った頃の話、 学生を終えて東北の秋田で過ごしていたころの話、 そして今の編み物…

全ては自分ごと エル・マク二コル『魔女だったかもしれないわたし』

かわいらしい表紙の本。 読み終えると、様々な物語のモチーフが 表紙に描かれていることがわかります。 主人公は自閉を持つ少女、アディ。 刺激が強い場所や、新しい場所は苦手ですが 興味を持ったことにはとことん、追及できる賢い女の子です。 けれども学…

ずっと大切にしている物語 フェルト『きかんしゃ1414』

わたしの本棚は決して大きいものではなく、 本を読む分量のわりに、蔵書はかなり少なめです。 それは、図書館を自分の本棚と思っているから。 でもその中で、本棚で不動の位置を占めているものが何冊かあります。 そのうちの1冊が、今日ご紹介する 『きかん…

人が互いに助け合う物語 ジュゼッペ・フェスタ『飛ぶための百歩』

とっても素敵な表紙の本、中身もすばらしかった! 自然科学の学位を持つ作者ジュゼッペ・フェスタが、 動物と山を愛する盲目の少年と出会ったことから生まれたこの物語。 主人公は目が見えませんが、おばさんとの山登りをこよなく愛し、 鳥にも詳しい少年。 …

古くて新しい作家に出あう タリアイ・ヴェーソス『氷の城』

図書館の新刊コーナーにて出会った美しい装画。 この表紙の美しさの通り、冬の静かな夜に読むのにぴったりの作品でした。 ある日学校に現れた転校生。 ミステリアスな雰囲気を持つ彼女は、誰とも関わることなく 静かに学校にいます。 人気者の主人公は、クラ…

読み終わった後が心地よい フレドリック・バックマン『ブリッド=マリーはここにいた』

これまたPinterestに出てきた本を見て、手に取ってみたのですが、 読んだ後になんだかほっとしてため息をついてしまいました。 結末が、とてもいいんです。 とても安心して、読み終えられる作品でした。 作家はスウェーデンの人気作家で、これまでの作品も …

今年出会えて良かった作者 加茂谷真紀『愛のエネルギー家事 すてきメモ303選』

少し前に作者の加茂谷真紀さんの新しい本が図書館にあり、 すっかりファンになってしまいました。 ファンになるととことん、突き詰めて読むわたしは、 今出版されている3冊の本を、すべて予約しました。 この本は家事に対して、色々な面があることを教えてく…

夏休みは長編を テリーザ・ブレスリン『メディチ家の紋章』

旅に出ていて、更新が遅くなりました。 子どもが夏休みに入ると家で過ごす時間が長いので、 気合を入れて長編に挑戦するのがここ2年の恒例です。 とはいえ、子どもが1人で読んでくれるようになったのは去年から。 そう考えると1人読書に没頭できる時間が、本…

様々な人を知る一つの方法 椎野直弥『僕は上手にしゃべれない』

小学校の図書室で勤務をするようになり、子どもたちが今好きな本を知ると、 わたしが子どもの頃は手に取らなかったような本に出会うことがあります。 子どもたちから「この本、面白かったよ!」と言ってくれる時があり、 そういった本は必ず読むようにしてい…

本と出会う時期 モンゴメリー『青い城』

ずっとわたしの本棚にあるモンゴメリーの『青い城』。 小学生のころ、赤毛のアンよりもこのモンゴメリーの作品が大好きでした。 ちょうど4年生くらいのときに、読んでいたのを良く覚えています。 主人公は29歳。厳しい母親に愛されることなく、 貧しい生活の…

生きる主役は、自分 ビアンカ・ピッツォルノ『ミシンの見る夢』

先週はどこかで1万円を落としてしまって、 落ち込んでいて更新ができませんでした。 幸い発見してくださって届けてくださった方がいらして、 ホッと一息。 気を取り直して今日の1冊。 冒頭のわたしのエピソードなど、取るに足らないことのように 思える物語…

いつまでも友達のピッピ リンドグレーン『長くつ下のピッピ』

4月末から5月にかけて、子ども読書週間というのがあるのをご存知ですか? 文字通り、子どもに読書を推進する運動なのですが、 それに合わせて図書館などでは様々なイベントが行われています。 近所の図書館でも、新聞紙に包まれた本が年齢別に分かれて置かれ…

現在のアメリカン・ドリーム ケリー・ヤン『わたしのアメリカンドリーム』

最近、アメリカに関しては格差の現実を書いたものが多い気がします。 けれどもこれはそんな現実を描きながらも、希望も書かれていて 最後まで読んで良かった、と思った作品です。 主人公の両親は中国からの移民で、 やっとのことで見つけた住み込みのモーテ…

繰り返し出会う本の中のひと 宮本輝『ここに地終わり 海始まる』

kindleの表紙をそのままアップするとなんだか味気ないですね! わたしにとって大事な本で、時折読み返したくなる本です。 小学生の頃は浴びるように児童文学を読んできた私は、 中学生になった時に何を読めばいいのか、 全くわからず途方に暮れていました。 …

時間泥棒をされる魅惑シリーズ ジェームズ・ロリンズ「シグマフォースシリーズ」

今週のある日。 開店と同時にお店に駆け込むような感じで、 開館時間に図書館へ駆け込みました。 それは、この本の続きが読みたかったから。 図書館の文庫本で、ずらっとならんだこのシグマフォースシリーズを見た時、 なぜかとても惹かれるものを感じました…

たまにはハードボイルドを バリー・ランセット『ジャパン・タウン』

図書館をうろうろしていると、普段は手に取らない本が目に入ってくることが あります。これこそ、ネットショップではない実際に手に取ることのできる本の 醍醐味だと思うんです。 本当は本屋さんでこれができたらいいのだけれど、うちの周りは今 あまり本屋…

南と北に惹かれる人たち 石川直樹『極北へ』

あるとき、さりげない会話からヨガの先生と旅行をするとしたら どこに行きたいか、と話したことがありました。 (コロナの前です) それぞれ行きたい国や地名をあげていっていたら、 ヨガの先生はとにかく暖かいところ、 わたしは寒いことで有名なところばっ…