読み終わった後の静かな感動を、どう表せばいいのだろうか。
長い登山を終えて、そして下りきった後にも美しい景色が待っていた。
そうお伝えしたらこの本のすばらしさをわかっていただけるだろうか。
たまたま新しい職場の図書館で出会った本だけれど、
きっと今まであまり手に取られることはなかったに違いない。
結構なボリュームのある本だから。
けれど、まるで山頂の美しい景色を見た途端、
長く苦しい道のりを忘れてしまうように、
読んだことを全く後悔しない本であることは間違いない。
この本はCIAがソ連で禁書となっている本をわざわざ西側諸国で出版し、
それをソ連内で配布し人の意識を変えようとする作戦が元になって
書かれている物語です。
もちろんフィクションだけれど、あとがきを見ると
実際にそういう意図で配布された本があったようです。
ただ作戦そのものではなく、
その本の作者と愛人、そしてCIAで活躍する女性たちに
光が当てられています。
このCIAで働く女性の描写がとにかくすばらしくて、
読後の今でも私のなかで生き生きと本当に存在する人のように
感じられるのです。
秘密作戦から仲良くなった職員の女性たち。
特に親友のようになり、やがて互いを愛するようになった2人の様子。
大きな作戦の裏にいた女性たちの活躍。
本の内容を思い出すだけでもう一度この世界に浸りたくて
ため息が出てしまう。
実際、この本が発売される前から版権を争って、
たくさんの出版社が名乗り出て競い合ったそうです。
どうぞ出会ったら徹夜覚悟で、
ぜひ読んでみてください。