hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

心がぎゅっとつかまれる本たち 上間陽子『裸足で逃げる』+『海をあげる』

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 夏休みは更新が遅れがちに…。本は変わらず息をするように読んでいますが、

ご紹介が追い付かない…。

ぼちぼち更新ですが、時々のぞいてくださるとうれしいです。

 

さて今回は前から知ってはいるものの、なかなか手に取ることができなかった

1冊、そして同じ著者の作品をもう1つご紹介したいと思います。

『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』

は、いつか読もうと思っていた1冊でした。

たまたま知人と沖縄の話になり、ふとこの本を思い出して

読んでみようと思い立ちました。

社会学者の著者が、タイトルにある通り夜の街で働く若い女性たちが、

どのような幼少期を過ごして今の仕事にたどりついたのか、

そのような経緯が本人の話とともに語られています。

家族の暴力によって居場所がなかった子ども時代や、

今も配偶者に殴られているのが当たり前の女性。

それぞれの境遇を著者は聞きながら、暴力の連鎖の中にある

女性たちの声を聞き取って文章にしてくれています。

 

本だから、このように「えい!」と覚悟がいる読書は

あえてする必要はない、と思われる方もいらっしゃるでしょう。

楽しい本だけ選んで、それを読むことで今の境遇が忘れられるから、

あえて読むだけで心が揺さぶられたり、何日も動揺するような読書を

する必要はない、と考える方もいらっしゃると思います。

 

わたしは、幼いころ幸運にも様々な本の中で色々な境遇の

主人公たちにあってきました。

昔話には残酷な人たちがたくさん出てきたし、

泥棒にお金を取られる主人公もいたし、

安心なはずの家の中で不幸を感じている子どもたちの姿も読んできた。

そのことはわたしの心の中に重なり、

現実であるこの本に書かれている女性たちの過酷な体験を、

無視することなく読んで知る決意を作ってくれているのだと思うのです。

わたしが過酷な現実に「知らんぷりをしない」という選択をする根底には、

幼いころに出会った本当に多くの主人公たちがいてくれる。

だからこの本とも向き合えたのだと思います。

 

覚悟を持って一気に読んだ本だけれど、

やっぱり知って良かったと、読んで良かったと心から思うんです。

きつかった読書です。

本当に、知ることが、辛かった。

だけれども読むこと、知ること、それだけでもきつかった

彼女たちの境遇に思いを馳せることは止めたくないのです。

 

そして、同じ著者の

『海をあげる』。

こちらは著者のエッセイで、先ほどの1冊と関わっている所もあるし、

子育てのこと、沖縄に暮らす人の基地とのかかわりなど、

日常のことが中心に描かれています。

子育てのことには本当に共感することが多くて、

何度も涙したり読み返したりしました。

軍の飛行機の爆音におびえる子どもの姿も、

沖縄で暮らす人の現実として、自分の体験として、

書き残してくれています。

 

ああ、なんて心に迫る本たちなんだろう。

『裸足で逃げる』を読む自信がない方は、こちらの『海をあげる』だけでも

読んでみることをお勧めします。