先日、帽子をめぐる面白かった本を紹介した後、
物について考えていました。
大切にされた物、どうしても手放せない物、
人それぞれにある物との関係。
思い出したのが今日の本でした。
森瑤子さん。大人の恋愛についての小説をたくさん書き、
洋服の着こなしが美しいことで知られている小説家です。
わたしが彼女の小説に出会ったのは小学生の頃。
もちろん恋愛など何も知らない頃でしたから、
何もその酸いも甘いも理解できないながらも
どきどきしながら彼女の本を読んだことを覚えています。
その後高校生ぐらいの時に、彼女のエッセイに再び出会い、
この写真の本も長らく自分の本棚に置いていました。
森瑤子さんが大切にされていたものの数々が、美しい写真と
エッセイとともに収められている一冊です。
高校生の頃は、こんなものを持っている人がいるんだ、と
別世界のように思ったものでした。
「彼女と同じようなものに出会ったらいつか自分も手に入れるんだ!」
というギラギラした気持ちで見ていたのではなく、
大切な誰かの、まるで持ち物拝見のような気持ちで
読んでいたことを思い出します。
面白いことに、彼女の持ち物の中で一番印象に残ったものは
昔も今も変わらず、石のエッセイでした。
冒頭のエッセイで「不思議な石」として紹介されている石は、
森瑤子さんが小説を書けなくなりそうなとき手に握られたもので、
「お助けニギニギ」と命名されていたそうです。
どんな石か由来もわからず、ただある日作家夫人から
突然いただいたというこの「お助けニギニギ」。
エッセイには美しい物、貴重なもの、
旅の思い出などの写真がたくさんあるのに、
なぜかわたしの一番印象に残るものは、今も変わらず石でした。
人と物との関係、出会いについて深いものを感じざるを得ない
エッセイです。写真も美しいのでぜひ、ご覧になってみてください。
噂の石は一番初めのエッセイに載っています。