hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

物と人 森瑤子『人生の贈り物』

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先日、帽子をめぐる面白かった本を紹介した後、

物について考えていました。

hon-nomushi.hatenablog.com

大切にされた物、どうしても手放せない物、

人それぞれにある物との関係。

 

思い出したのが今日の本でした。

森瑤子さん。大人の恋愛についての小説をたくさん書き、

洋服の着こなしが美しいことで知られている小説家です。

わたしが彼女の小説に出会ったのは小学生の頃。

もちろん恋愛など何も知らない頃でしたから、

何もその酸いも甘いも理解できないながらも

どきどきしながら彼女の本を読んだことを覚えています。

その後高校生ぐらいの時に、彼女のエッセイに再び出会い、

この写真の本も長らく自分の本棚に置いていました。

 

森瑤子さんが大切にされていたものの数々が、美しい写真と

エッセイとともに収められている一冊です。

高校生の頃は、こんなものを持っている人がいるんだ、と

別世界のように思ったものでした。

「彼女と同じようなものに出会ったらいつか自分も手に入れるんだ!」

というギラギラした気持ちで見ていたのではなく、

大切な誰かの、まるで持ち物拝見のような気持ちで

読んでいたことを思い出します。

 

面白いことに、彼女の持ち物の中で一番印象に残ったものは

昔も今も変わらず、石のエッセイでした。

冒頭のエッセイで「不思議な石」として紹介されている石は、

森瑤子さんが小説を書けなくなりそうなとき手に握られたもので、

「お助けニギニギ」と命名されていたそうです。

どんな石か由来もわからず、ただある日作家夫人から

突然いただいたというこの「お助けニギニギ」。

エッセイには美しい物、貴重なもの、

旅の思い出などの写真がたくさんあるのに、

なぜかわたしの一番印象に残るものは、今も変わらず石でした。

 

人と物との関係、出会いについて深いものを感じざるを得ない

エッセイです。写真も美しいのでぜひ、ご覧になってみてください。

噂の石は一番初めのエッセイに載っています。