hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

それぞれの物語 アントワーヌ・ローラン『ミッテランの帽子』

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なぜか横になってしまって…見にくくてごめんなさい。

この美しい表紙を、首を横にしてみてくださいね。

 

主役は帽子。

フランスの大統領フランソワ・ミッテラン

ある日レストランに帽子を忘れ、

ひょんなことからその帽子を手に入れた3人が、

ぱっとしない人生を変えていくという物語です。

 

1人は会社で役職につき、

1人は別れられなかった不倫の関係を清算し、本物の愛に出会い、

長くスランプだった香水調香師は、再び伝説の香水を生み出し、

もう一人は古典的な社会から飛び出し、現代アートの巨匠へと

のめり込んでいきます。

そしてミッテラン大統領も、再び帽子を手に入れた後、大統領へ。

 

そんな風に「もの」が人を押し上げてくれること、

もしかしたらそんなことがあったら、

ぜひその「もの」に出会いたいと思うものだけれど、

この主人公たちはものを失った後でも、

自分の人生の素敵なところがちゃんとあるのです。

もともと持っていた彼(女)の能力を帽子が引き出した、

という風に考えると、しっくりくる結末でした。

 

上手くいかないことがあるときにこの物語に出会って、

自分なりの宝物に読者が出会ったら…。

それが、この物語の本当の面白さではないかと思います。

さて、わたしの手放せない宝物はなんだろう。

わりとなんでも手放せるほうですが、

自分の大切な持ち物を見直してみたくなりました。

 

物が大好きな方にぜひお読みいただきたい小説です。