hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

静かな本 ナン・シェパード『いきている山』

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図書館の新刊本コーナーにひっそりとあり、

この美しい表紙に魅せられて借りてきました。

 

作者は1893年スコットランドに生まれ、

1981年に亡くなっているナン・シェパード。

1944年ごろ書かれたこの作品は日の出を見ず、

1977年にようやく出版されたのだそうです。

 

この作品をなんと説明したらよいか…。

近くの山に入り、そこで感じた様々なことを

美しい言葉で綴っている本です。

山との関りは、登頂を目指すアグレッシブなものではなく、

周り道を楽しむ彼女独自のもの。

そのために、この作品は山頂へのアタックが主に描かれている山岳文学とは

一味違う読後感と存在感があります。

 

とにかく、静かな文章です。でも単調ではなく、

静かな中にリズムがあり、それが心地よく

最後まで読みきってなお、この文体の中に漂ってしまうような気持ち。

読んだ後、はっきりとしたイメージがつかみにくくて、

また何度も読み返したくなるような不思議な作品でした。

 

この作品からインスパイアされて様々な音楽や写真などが

生み出されているそうです。

そちらもまた興味をそそられています。

 

はげしい展開の小説はちょっと辛いときに、

どうぞ静かなナン・シェパードの文章に触れてみてください。

心地よさと静けさを味わえる文章でした。