図書館の新刊本コーナーにひっそりとあり、
この美しい表紙に魅せられて借りてきました。
1981年に亡くなっているナン・シェパード。
1944年ごろ書かれたこの作品は日の出を見ず、
1977年にようやく出版されたのだそうです。
この作品をなんと説明したらよいか…。
近くの山に入り、そこで感じた様々なことを
美しい言葉で綴っている本です。
山との関りは、登頂を目指すアグレッシブなものではなく、
周り道を楽しむ彼女独自のもの。
そのために、この作品は山頂へのアタックが主に描かれている山岳文学とは
一味違う読後感と存在感があります。
とにかく、静かな文章です。でも単調ではなく、
静かな中にリズムがあり、それが心地よく
最後まで読みきってなお、この文体の中に漂ってしまうような気持ち。
読んだ後、はっきりとしたイメージがつかみにくくて、
また何度も読み返したくなるような不思議な作品でした。
この作品からインスパイアされて様々な音楽や写真などが
生み出されているそうです。
そちらもまた興味をそそられています。
はげしい展開の小説はちょっと辛いときに、
どうぞ静かなナン・シェパードの文章に触れてみてください。
心地よさと静けさを味わえる文章でした。