いつものようにふらふらと図書館を歩いていたら、
ふと目にとまった作者、ジオノの文字。
「どこかで、どこかで…」と思い返して、
家にあるこの絵本を思い出しました。
きっとご存知の方も多いでしょう。
美しいアニメーションにもなっている『木を植えた男』。
森に関わるようになって改めてこの本を開いたとき、
人と森との関係に再び思いを馳せました。
この絵本の中で、荒れ果てた大地がよみがえるにつれて、
人々の関係もまた、うるおいを取り戻していった、とあります。
今なら、その気持ちがほんとうによくわかります。
以前のわたしは自然のことなどこれっぽっちも考えたことがなく、
買い物はスーパー、シャンプーはドラッグストア。
そのような生活の中で読んだジオノは、
本の内容よりも、色彩の豊かさ、本としての完成度に
衝撃を受けたものでした。
そこから数年、数十年たって、
キッチンの排水溝の、その先の海へと思いを馳せるようなった今。
そして自ら土に触れたいと思うようになったわたしは、
本の中の人と森との関係に、
深くやすらぎと安心を感じて、本を読み終えました。
こんなに考えることや生活が変わったのに、
人がどちらの状態であっても、訴えるものがあるこのジオノの作品。
もし読んでくださっている方が、
都会の中で閉塞感を感じている方だったら、
ぜひ手に取られてみてください。
自分の中に深い呼吸が下りてくるような絵と、
もの静かで長い年月を抱えているような文章に、
ほっとする気持ちを取り戻せるかもしれません。