ヴァ―ランダ―という刑事を主人公にしたスウェーデンのミステリを読んで以来、
すっかりファンのスウェーデンの作家、へニング・マンケル。
普段わたしは気に入った作家がいると、その方の作品をごっそり借りてきては
読むのが習慣なのですが、
マンケルに関してはそのような「まとめ読み」をしていなかった…。
それに気づいたのは先日、この
『イタリアン・シューズ』を本棚で見つけた時でした。
ところが、この作品を読み始めたら
「まとめ読み」をせずに良かった、と安どする気持ちになりました。
というのは、この作品があまりにもすばらしくて、
読み終えるのが惜しくてたまらなかったからです。
そんな気持ちになる作品にはたくさん出会ってきているはずなのに、
マンケルの作品を読むと、終わってしまうのが
寂しくてたまらないのです。
マンケルは犯罪をテーマにした作品が多く、早く犯人を知りたいけれど、
急いで読むと本を読み終わってしまうというジレンマがあって、
やきもきする本です。
この作品は孤島に住む世捨て人のような元医師が、
ある日若いころにひどい形で捨てた元恋人の訪問を
受けるというところからはじまります。
でも今回は解決すべき犯罪ではなく、
一人の世捨て人のように生きてきた医師の生活が
元恋人の訪問によってがらりと変わる様子を
描いている作品です。
マンケルの作品の中に、他にもまだ読んでいない本があって、
読んでしまいたいような、まだとっておきたいような
気持ちで揺れています。
そして、いつもマンケルの本を訳してくださった方に
心の中で拍手喝さいをしています。
素晴らしい本に出会えるのも、翻訳という橋渡しがあってこそ。