あるときカナダを訪れて、そこで暮らす学生の友人と、お昼ご飯を食べようということになりました。
その都市では、朝ごはんが11時くらいまでたっぷりのボリュームで出されるそうで、学生の私たちは一食でおなかいっぱいにしようと、11時間際にレストランに行きました。そのとき彼女が、「わたし、ご飯の中で朝ごはんが一番好きなんです!」と言ったことが忘れられず、朝ごはんには特別な思いが今でもあります。
そんな一言を思い出す、この『朝ごはんからはじまる』。
毎日新聞の連載にイラスト入りエッセイが書かれていて、山本ふみこさんのことを知りました。普段の料理が楽しくて仕方ないこと、暮らしのあらゆることが楽しみでしょうがない彼女の文章は、いつもごはんのようにしみわたってきます。
「あせりたくない一心で、時間ができるとおかずの蓄えに走る」とか、
「家に帰った時のわたしを、目覚めたときのわたしをがっかりさせてはまずい」からと、出かける前や夜寝る前に必ず台所を片づけておくこととか、そんなことがすごく助けてくれることを、自身の生活を通して見せていただいています。
これをしていなかったから落ち着かなかったのだというような小さなことは、なかなか自分では把握できないことが多くて、つい焦ってしまいがちなのですが、ふみこさんの本を読むと、それを解決する足がかりがたくさんあって、とても助けてもらっています。
朝ごはんから、ひとつひとつ。ちょっと焦りがちなわたしの今、もう一度読み返して落ち着きます。