hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

味わい何度もかみしめる

本とともに思いがけないところへ 小川糸『にじいろガーデン』

時折、なにげなく手にとった本で思いがけず遠くへ旅する気分になることがあります。まったく予想のつかないところへと手を引かれて連れて行ってもらうような感覚。 この小説はまさにそんな作品でした。 『キラキラ共和国』からはまっている小川糸さん。読ん…

普通に?生きること 吉田修一『横道世之介』

前回のブログ、小川糸さんのエッセイにこの本のタイトルがあり、早速読んだもの。 おもしろいのは役に立つ教訓やら、そんな感じのことは全く書かれていないのに、読後感がなんとも味わい深いのです。「普通に生きる」ことはどういうことなんだろうと、つい考…

ルーツを探る冒険 ケイト・モートン『忘れられた花園』

書店で文庫が並んでいるのを見て、吸い込まれるように魅せられた作品。初めて出会ったケイト・モートンの物語をご紹介します。 本との出会いは人との出会いとよく似ていると思います。たまたま出会った人と親友になることがあるように、 思いがけず手に取っ…

マンガのような読後感 朝井リョウ『星やどりの声』

新聞の書評を見て、装丁に惹かれて手に取った本。はじめてこの作者を知りましたが、一度目にしたら忘れない印象的なタイトル『桐島、部活やめるってよ』と同じ作者だったのですね(こちらは未読)。 最初に登場する人物が多く、読み始めは世界に入り込むのに…

仕事がテーマでも 喜多川泰『手紙屋』×穂高明『むすびや』

たまたま読んだ本が、就職に関する本でシンクロしていました。せっかくなので2冊同時にご紹介します。 喜多川さんの作品は読むたびに背中を押してもらうような、あたたかな力強さを感じます。穂高さんはこのブログでも何度もご紹介していますが、新作は必ず…

あの日をいろんな角度から 穂高明『青と白と』

3月11日のあの日を、強烈に思い出す本を読みました。 はじめの章の主人公は仙台出身の小説家の卵。東京に住んでいるのですが、家族は仙台に住んでいるという設定です。3月11日の地震を東京で感じた小説家の主人公は、すぐに東北の家族と連絡を取ろうとし…

雨の日はミステリー カーリン・イェルハドセン『パパ、ママ、あたし』

我が家のあたり、今日は雨の火曜日。冬に戻ったような気候の時は、北欧発のミステリーが似合います。 ミレニアムにはまって以来、 hon-nomushi.hatenablog.com 北欧の作家が書くミステリーを見ると、手に取らずにいられません。この本も、迷わずに図書館で手…

ずっと2冊の本 池澤夏樹『きみが住む星』

小説を読むほどの元気はなくて、テレビのペースにはついていけない。でも何か別の世界にひたりたい。そんな時におすすめの本です。出会ったのは中学生の頃。当時購読していた通信教育の雑誌に、新刊案内として載っていました。 あの時、惹かれたのはこの表紙…

一歩一歩 階段をのぼるように 宮下奈都『羊と鋼の森』

テレビで見かけて気になっていた本が手元に届きました。 主人公は高校生の時、ピアノの調律師の仕事を目の当たりにしたことで、一生の仕事にすると決めます。それまで全くピアノにふれたこともなかったのに、ただその調律師が出す音に惹かれて、一心にその道…

ひとりの時間の物語 いぬいとみこ『山んば見習いのむすめ』

今日、わたしの住む地域では風が強くて、春のようなあたたかさ。 春を迎えたらもう一度読もうと思っていたこの本を手に取りました。 子どものころは外国のお話ばかり読んでいましたが、大人になった今は、日本の物語にとても心ひかれます。いぬいとみこさん…

シュールな親子関係 ほしよりこ『逢沢りく』

軽い気持ちで読み始めましたが、けっこうヘビーだった本。 漫画ですが、親の一人として考えさせられます。 主人公はウソ泣きが得意。とはいえ、本当に自分で泣いたことはなくて、 なぜ人が涙を流すのかよくわからない子。 父母とも表面上は完璧な美しい家庭…

いつもとは違う気持ちで ピエール・ルメートル『悲しみのイレーヌ』

なぜこの本を予約したのか?今となってはすっかり忘れてしまいましたが、予約していた本として手元に届きました。 推理小説のジャンルに入ると思うのですが、ディープな日常とはかけ離れた本は、雨が降り続く寒い季節にはぴったりかもしれません。 主人公は…

大切にした時間の記録 中島京子『小さいおうち』

ずっと気になっていた本をようやく読むことができました。 映画にもなっている?タイトルと表紙に惹かれて選びました。 主人公が過去の出来事を回想しながら話が進むのですが、時代は戦争前、戦争中真っ只中のはず。けれども、家政婦の主人公にとって大切な…

ちょっとちがう?かぞくの話 菊地澄子『わたしのかあさん』 

更新に時間がかかってしまいましたが、変わらずせっせと読書しております。 今日は児童書コーナーで見つけた一冊をご紹介します。 小学生高学年になった主人公は、今日の授業参観での母の態度が恥ずかしくて、落ち込みながら家に帰ります。母は実は養護学校…

まいにちやることの一部 村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』

久しぶりに村上春樹さんを読みました。 彼の作品はほぼすべて読破しているはずなのに、この作品だけはなぜか手に取らずにいました…。たぶん走るという行為が全く自分の生活にないので、なんとなく読まずにいたというだけなのですが。でもでも、予想に反して…

週刊誌をのぞく感覚ー藤堂志津子『桜ハウス』3部作

なんともカテゴリーに迷う本ですが…笑。 先週、藤堂志津子さんの桜ハウス3部作を読んでいました。 藤堂志津子さんの名前は、山田詠美さんのエッセイで何度かお見掛けしていました。 手に取ったのは今回がはじめて。 図書館で『ほろにがいカラダ』というタイ…

イメージと物語ー岩井俊二『ラヴレター』『スワロウテイル』

数日前、新たな作品との出会いがありました。 きっかけは、大好きな画家(アーティスト?)の方が岩井俊二さんの本の装丁をされたとお仕事の報告をしていらっしゃるHPからでした。 「ぜひ見てみたい!」と予約をしたとき、岩井俊二さんの本を読んだことがな…

迷った時の指南ー『わたしの暮らしのヒント集』『続・わたしの暮らしのヒント集』

何か迷ったり、誰かのアドバイスが必要だと思ったとき、 わたしはいつも図書館の返却コーナーをうろうろします。 いつも手に取る本はどうしても決まったものが多いので、 誰かが手に取った、自分では選ばないような本から、ヒントになることを いただくこと…

番外編ー映画「わたしに会うまでの1600キロ」

久しぶりに映画館で映画を見ました。 そんなに大きな映画館にはいかない(人も少ない映画しか行かない)ので、 一人でものすごく集中できて大切な時間です。 この映画は主演女優の出ていた作品を以前DVDで持っていたほど好きだったのと、 新聞広告で記事を読…

強い印象を残すー梨木香歩『僕は、そして僕たちはどう生きるか』

衝撃という以外にない、強く感情をゆすぶられる作品に出会うことがあります。そんな作品に出会うと、その後何日も本の中の場面を何度も思い返すことがあります。 そして、忘れられない。この本もそんな作品の一つ。 図書館のティーン向けの本棚にあったので…