hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

一歩一歩 階段をのぼるように 宮下奈都『羊と鋼の森』

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テレビで見かけて気になっていた本が手元に届きました。

主人公は高校生の時、ピアノの調律師の仕事を目の当たりにしたことで、一生の仕事にすると決めます。それまで全くピアノにふれたこともなかったのに、ただその調律師が出す音に惹かれて、一心にその道を進みます。

 

迷いもなくその道に進み、調律師として仕事をはじめてから。

主人公はただその音の道の長さ、調律師それぞれの歩む道の違い、あらゆる失敗や感動を体験しながら、道を極めていきます。

その様子はまるで登山のよう。一歩を踏みしめながら、その一歩が確実に望むところへ進むはずと信じて、ひたすら上り続ける登山者のようでした。途中でもちろん転んだり、冷や汗をかいたりもするのだけれど、でもずっと進み続ける主人公の姿に、力をもらう気がします。

 

主人公の様子を読んでいると、まるで並んで歩かせてくれるような、そんな読者のペースにも配慮されているかのような構成でした。読んでいるとき、決して一人きりにはなりませんでした。読んだ後はまるでおなかのあたりに力を入れてもらったよう。そんな確実を体感する作品でした。確実な一歩を体感したい読書にぜひ。