『今日』という、赤ちゃんのお世話をする親の一日をうたった詩をご存知でしょうか。
この赤ちゃんを育てている人にそっと寄り添ってくれる詩を
翻訳された伊藤比呂美さんの本を、書評で見つけて読んでみました。
「今日」という詩と出会ってからはずいぶん経つのに、
伊藤比呂美さんの作品をしっかり読んだのは初めてでした。
様々なことをくぐり抜けてこられた方。
そして今もなお、くぐり抜けている最中という感じがする。
アメリカに長く住み、英語の生活の中で「血を流して」
暮らして来られたという様子。
永住権をめぐって、いつでも資格を失うという
恐怖と共に生活をすること。
熊本での生活で、犬と共に歩く散歩道での植物や動物との関り。
そのどれもが生々しくて、著者の心の声そのものなので、
ただ流れていく心地よいエッセイではありませんでした。
力強さ、たくましさを感じる文章で、
生きていくことそのものを描いていると感じました。
その力強さに元気をもらって、
忘れられない本になりました。