hon-nomushi’s blog

読んだ本、大好きな本、そして時々生活のつれづれ

同じ街から様々な人を知る あさのあつこ『かんかん橋を渡ったら』

 

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ちょっと前に読んだ作品ですが、忘れられない一冊。

地方の人口が少ない街にある、ちいさなかんかん橋。そこを行きかう人たちの様々な人生を、章ごとに異なる主人公が生きる様を描いた一冊でした。

 

街の様子は一貫してさびれていて、大きな出来事もなにもない、話題にもならない小さな地方の街。でもそこを行き交う人たちには様々なバックグラウンドがあり、今がある。かかわりあう人の関係が、一人ひとりの人生とともに深く描かれていて、自分もその街にまぎれこんだかのようなリアリティのある小説でした。その深みをしっかり味わう読書になりました。

 

特に印象的だったのは、厳しい父から離れたくて早くして結婚、子どもを持った主人公の姿でした。幼いころから父の文句ばかり言う母。こんな結婚はしたくないと、自分で家庭を持ってみると若いことから起きる、結婚相手とのすれ違い。でも彼女は、かんかん橋を行き交う人に助けられて、初めて自分が人生の主人公だと気づき、人生を変えていく強さを持つようになっていきます。子育ての葛藤、人との関り、夫となる人との関係、そのすべてがリアリティにあふれていて、何度も人の強さにじんとなりました。

 

様々な人がいて、行き交うことで生まれる一つの街の歴史。本になったり、記録をされるものではない人たちの人生だけれど、それが本当にとおといものなのだと実感した読書でした。よかった。なんでもない偶然ですが、数か月後の義父の家に行ったら、この本が置かれていました。義父はどの主人公が印象に残ったか、今度聞いてみようと思います。

 

読むファッション 光野桃『おしゃれの視線・私のスタイルを探して』

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おしゃれということについて、初めて意識したのは中学校のころ。雑誌のnon-noが愛読書でした。とはいっても、その頃は眺めるだけ。雑誌のアイテム、アニエスベーに憧れたり、色々な装いを見ても、自分とつながる装いはなかなか思いつきませんでした。

 

そんなただ眺めるだけの雑誌でしたが、いつも楽しみにしていたのは光野桃さんのエッセイ。当時中学生だった私にとって、ミラノで暮らす著者のエッセイは強烈な印象で刻み込まれ、ヨーロッパへのあこがれはさらに強くなりました。そのエッセイが『おしゃれの視線』という一冊の美しい本になったとき、手に入れて読んだ感動は忘れられません。美しい写真と装丁、文章の味わい。初めてファッションについてのエッセイが、こんなにも美しい本だったとは、なんと幸福なこと。特に引っ込み思案だったイタリアの女の子が、自分だけの美しさを見つけた話をはじめて読んだ感動は、今でも鮮明に覚えています。

 

その光野さんのエッセイが、時を経てもう一冊の大好きな作品『私のスタイルを探して』と一緒に一冊の文庫になっていました。このスタイルはミニマムな本棚に完璧なボリューム。わたしの少ない蔵書の一冊になりました。

 

いつ読み返しても、いつも新鮮に「着ること」を考えさせてくれるエッセイです。まだまだ装うことに関しては悩むことが多いわたし。でもそっと寄り添い続けてくれるこのエッセイがあれば、その悩みの答えが必ずこの中にある、と思い、手元に置き続けています。

 

文庫も良いですが、機会があったら一冊だけの『おしゃれの視線』もぜひ手にとってみてください。写真の美しさにはっとする一冊です。

楽になるためにやめたこと おーなり由子『だんだんおかあさんになっていく』

 

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今日は子育て中におすすめの本と、我が家の子育てで、やめてみたら
自分がとても楽になったことをお伝えします。
 
現在我が家には今年4才になる子が1人います。
幼稚園年少に入る1年前から保育園に通っています。今は保育園2年目。
子どもはたいてい朝5時に起き、7時半ころ保育園へ。

わたしは 基本的に在宅勤務なので、子どもが保育園に行っている間、
だいぶ自由があります。そのはずなのに、なぜか子どもが帰ってくるといつも焦って、もっともっと自分の時間を得ようとしていました。

 

保育園からの帰り道は寄り道だらけ。結局特別なことがない限り、暗くなるまで外で遊びます。内心焦りながら時計をチェックし、適当なところで切り上げさせる。ごはん、お風呂が終わるまではスピードを上げて。「早く、早く!」と食べさせたりお風呂に入ったり。あるときふと、「なぜ焦っているんだろう?」と考えました。夕方確かにやることはたくさんあるのだけれど、早く色々を済ませることが、本当に夕方に必要なのかな?と思ったのです。

 

考えてみたら週末以外、ほとんど別の時間を過ごしている私たち。彼が家にいて自分のペースで何かをできる時間や、わたしや家族との時間は、平日は本当にわずかなのです。

 

日々の一緒に過ごす時間が短いと気付いたとき、わたしは「限りある一緒の時間を、もっと大事に過ごす!」と決めました。義務ではなく、心からそうしたいと。今が終わってしまったら、子どもはもっと大きくなってあっという間に手を離れてしまう。

一緒の時間を大事に過ごしたい、それが私の一番今したいことだとわかったのです。

 

子どもとの時間を集中して過ごすためにまずしたのは、夕方18時半からiphoneをおやすみモードに変えること。音が鳴るとつい気になってしまうので、最初から鳴らないように。家族にも「18時半からは携帯が通じません」とお知らせ。外のことに煩わされないためにできることを考えたら、私の場合はiphoneを触らないことでした。

 

ただ電話をオフにして、集中して子どもと過ごすことを決めたら、夕方が本当に楽になりました。電話を見るという行為や、外からの情報をシャットダウンすることで、目の前のことにこんなにも集中できるということに、自分でも驚いています。きっと私の脳は、多すぎる物を見ると混乱するように、子育てと情報整理を一緒にするようにはできていないのですね。

 

こうやって自分のやり方を見つけることが、だんだんおかあさんになっていくことなのかもしれません。もう子どもが4才に近いのに、まだ「私のペース」を優先したくて、おかあさんになりきれていないところがあるのはちょっと恥ずかしいけれど…。でもだんだんのペースは人それぞれ。そのとき子どもに無理をさせず、自分も無理のない方法が見つかるといいな、と気長に構えてみます。この本をゆっくり読みながら。

 

詩やイラストがたくさん、文字は少なめなので、まだ小さな赤ちゃんを育てているおかあさんにとてもおすすめです。

 

 

 

 

今日の片付け いただいたお菓子の箱

先日、お祝いを贈らせていただいたお返しに、素敵なおせんべいの詰め合わせをいただきました。小さくてかわいらしい。こんなに繊細な食べ物を作る国は、日本以外にないような気がします。

 

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問題は、、、箱も美しく、捨てにくいこと。

和の模様がさりげなく入っていて、美しい小箱。でも中をいただいてしまったら箱の中は空っぽ。いただいた箱、全てをとっておいたら大変なことになってしまいます。

 

箱をどう扱うか、わたしなりのルールを決めました。

ー1週間ほど取っておいて、使い道(入れるもの)が決まったら移動

ー四角い缶でほどよい大きさのモノ(何cmなどではなく自分の基準で)はとっておく

それ以外は、感謝をしてさよならをします。

要は自分が使えるものだけ、用途をすぐに思いつくものだけとっておくことにしています。形が丸い缶は、わたしにとって合う収納を思いつかないことが多いので、形だけで手放すもの、と判断。

 

1週間ほど考えている間、置き場所はリビング収納のティッシュの横。

毎日目に入るので、どうするか迷っているものはここに。

1週間考えて行き場が決まればそこに。決まらなければ手放します。

自分が納得できるステップを考えて判断すると、捨てにくい物も納得して

さよならをすることができます。

とっておくか迷うものは基準を決めておくと、楽に処理がすすみます。

夏の休暇はこの作品 リンドグレーン『わたしたちの島で』

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夏になるとスイカやとうもろこし、枝豆を味わうように、夏の読書に欠かせない作品。

 『わたしたちの島で』。

 

わたしが作者リンドグレーンを知ったのは小学2年生。やかまし村シリーズが大好きになったとき、初めて作者や舞台となった国を知りたい、と思ったのです。それから何冊も何冊もリンドグレーンの作品を読み続け、スウェーデンという国は深く私の脳に刻まれました。同時に翻訳という仕事について、知るきっかけともなりました。

 

最愛のリンドグレーン作品の中でも長編であるこの作品は、小学校高学年に初めて手に取った気がします。読み返すと面白いのは、いつでも新しい発見があること。子どものころは幼い主人公たちに感情移入をして、今は大人の主人公に感情移入をして、いつだって自分の気持ちに寄り添う主人公を見つけられるのが、この作品のチカラだと思うのです。

 

母親代わりのお姉さんマリーン、子どものようにDIYはことごとく失敗する小説家の父、3人の男の子は、夏の間ウミガラス島に別荘を借ります。そこで出会う大人のような子どものチョルベンや、近所のやさしい人たち。様々な騒動が描かれていますが、子どもも大人もこのウミガラス島に魅せられて、いつしかここを生きていく場所に選びます。

今回は心の中からあふれる夏への想いが強く心に残りました。いつだって読み終えるたびに静かな感動を感じ、この本に出会えたうれしさでいっぱいになるのです。いつか本の中のように、全身で季節を感じるお休みを過ごしてみたいです。 

 

着ることも本で学ぶ mucco『ケチケチ贅沢主義』

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今日はめずらしく「装い」に関する本を。

現実の私を知っている方も読んでくださっているので、ブログに「装い+美しさのこと」というカテゴリーを作るのにすごく抵抗がありました。何となくおしゃれをよく知る方だったり、本当におしゃれが得意でいつも素敵な方だけが、ファッションを語る資格があるような気がして。

 

でも洋服を着ることも、特別なことではなく、実は生活の一部なのですよね。

食べること、住むことと同列に、人は着ることとずっと一緒に生きている。だとしたら「苦手」と切り捨てて考えないようにするのではなく、もっと着ることを自分の味方にしよう、と思ってここ数年を過ごしています。

 

頼りになるのはやっぱり本。雑誌も良いのですが、自分を表現する手段として装いを活用するには、その時期の流行が入りすぎているのです。参考にするためには、長期的な視点で装いについて書かれている本がたよりになります。

 

タイトルにある「ケチケチ」とは、FP(ファイナンシャルプランナー)でもある著者が、普段の生活と切り離さずに、お金も含めたファッション論を展開してくださっていることを表しています。収入の全てを被服費に充てないと素敵な装いが不可能な雑誌の洋服たち。それらはやっぱりある程度の収入や、被服費に重点を置く方に偏っているように感じます。

 

ですがmuccoさんは、「生活の中での被服費」という視点をしっかり保つ必要性を語ってくださっています。おかげで、それまで切り離されていてどう考えてよいかわからなかった、お金と被服費の考え方がとてもクリアになりました。ライフプランの中にある装いという視点、これはなかなか雑誌には載っていない考え方です。

 

そして装いはまさに頭脳戦でもあると思いました。

長期的に大切にしたいものには投資をする⇒そのために予算を組み、貯める

自分に似合うアイテムを知る⇒客観的に自分を知る必要がある

お金の知識、自分への知識、TPOを考えられるやさしさ。

 

こう書くととても難しく感じるけれど、だからこそのチャレンジ。いつか自分のクローゼットすべての洋服が自分を応援してくれるようなアイテムで満たされていることを考えたら、とても幸せだと思うのです。想像するだけでなんだかうれしいゴールが、自分の中で決まりました。

とはいっても、あせらずゆっくり。たくさんの本に助けられながらクローゼットを構築していきます。装いとお金、どちらも学びたい方にぜひおすすめの一冊です。

 

 

 

 

 

 

 

ルーツを探る冒険 ケイト・モートン『忘れられた花園』

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書店で文庫が並んでいるのを見て、吸い込まれるように魅せられた作品。初めて出会ったケイト・モートンの物語をご紹介します。

 

本との出会いは人との出会いとよく似ていると思います。たまたま出会った人と親友になることがあるように、 思いがけず手に取った作品に深く魅せられることがあります。この作品ともたまたま最近書店で見かけてからというもの、頭から離れなくなりました。

 

まずは何といってもタイトル!『秘密の花園』が大好きで、朝5時から真似して庭に球根を埋めていたわたしにとって、「~花園」というタイトルに目を捉えられました。

そしてなんと翻訳のなめらかなこと! 3人の主な登場人物の姿が、時代を変えながら次々と描かれているので、ついていくのがやっとのストーリー展開。ですが文体の読みやすさもあり、流れに乗るように読書が進んでいきました。そのうち3人の関りが明らかになり、なぜこの3人が主な登場人物なのか、おぼろげにわかってきます。そうするともう止まることができなくなり、かなりの夜更かしをしながら読み切りました。

 

主人公のうちの一人、ネルは自分が港に捨てられていた存在であることを、ある誕生日に育ての父親から告げられます。もう一人は、ネルの孫。ネルが亡くなってから、自分にイギリスの家が相続されていることに気が付きます。

物語はネルが自分の親を探しに、イギリスに渡るところも描かれていきます。本当の自分の名前は何か、本当の両親はどこにいるのか。ネルが探るのと同時に、そのときは誰かわからない、もっと昔の時代の登場人物が現れます。そうしてルーツを探る旅に読者も巻き込まれていきます。

 

ところが物語が進むにつれて、自分の本当の名前を知ることが第一なのではなく、親を発見するだけではなく、その人が生きた道そのものを知るという冒険になっていきます。静かだけれど確かな人生の歩みがしっかりと記されて、そして現代を生きる主人公の生きる力につながっていました。深く味わい、何度も読み返したくなるラストでした。長いお休みにぜひおすすめの1冊です。

 

そしてもう一つ。表紙をみて何か見覚えが、と思ったら、桑原弘明さんのスコープでした。数少ない自分の本の中に作品集が。小さなものに目がない私には宝物の本です。こんなつながりをどこかでキャッチして、作品に惹かれたのかもしれません。 

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