hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

あったことをわすれない 伊藤詩織『ブラックボックス』

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今まで紹介してきた本とは異なるノンフィクション。

 

作者は仕事で知り合った人に暴行され、その事実を自分で書き、本になったのがこの著書。ただ時間の尺度では過去のことだけれど、著者は何度も何度もその時間を繰り返し再生し生きて、この本を書かれたのだと思います。

 

作者が生きてきた時間。子どものころからジャーナリストになる夢を持って留学。自分でお金を稼ぎながら生きて、そして暴行に合った経緯も何も隠さず描かれています。暴行がそこまで1人の人を打ちのめすほどのものだということを、そしてすべてを根こそぎ変えてしまったその暴力さを、痛いほど感じました。そしてなかったことにしないために、本当にたくさんのことをしなければならなかったこと。ご本人だからこそ、語れた、たくさんのその後のこと。暴行は辛い事実だけれど、読むことで触れたこと、心が痛んだことを忘れずにいたいと思いました。

 

今でもそのような被害が起きることが、他人ごとではないことは親でもある私が覚えておくべきことなのだと強く思いました。決して向き合うのに簡単ではないけれど、顔も名前もさらけ出しながら1人の人がさらけだした文章は、忘れないために心に刻んでおくのに十分でした。そして苦しみがずっと続いている事実からも目を背けない、背けられないこと。

 

使っていなかったけれど、捨てなかったもの

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こてこて。昔よくあったようなデーンと石が主張する指輪。亡くなった祖母が昔々、私へと準備してくれていたものでした。20歳のプレゼントにといただいていたものだそうですが、20代にこのデザインは重すぎて、使うことなくしまったきりのものでした。

 

片付けを初めて使わないものを手放していくうちに、何度もどうしようか悩みました。

「使っていない」し、持っていても「わくわくしない」。手放すものに当てはまることがたくさん。ただ、いつものように処分することに抵抗がありました。街のジュエリー買取では土台の金しか評価されないのではないかという心配がありましたし、石自体の価値がよくわからなかったので、価格の査定に自信がなかったのです。

 

「わからない時はその道のプロに聞いてみよう!」

相談先として思いついたのは、婚約指輪もつくっていただいたZelkova K ジュエリーデザイナーのけやきさん。ジュエリーのことならけやきさんに、と心から信頼している方です。

++ Zelkova.K / ゼルコーバ.K ++

 

実物をけやきさんに送って確認していただくと、石が本当に美しいもので、なかなか手に入らない美しい珊瑚だということがわかりました。赤が美しくて手放すにはもったいないとのこと。それを伺って決心がつき、指輪からネックレスにリフォームしていただくことにしました。

 

デザイン画を送っていただき、最終的にこの形で決定。 

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(画像はZelcova.Kさんページよりおかりしています)

先端の丸いネジネジがロングチェーンの数か所についていて、ロングにもショートにもアレンジ可。美しいだけではなく実用的で、普段も惜しげなく使うことができます。

 

そしてとっても驚いたこと。

指輪の時は重い印象だった珊瑚が、ネックレスになったら生まれ変わったように生き生きしていました。初めてつけたときには祖母からの応援が石に込められているように感じて、涙が出てきたほど。きっとそれは錯覚ではなく、祖母がこの珊瑚に込めてくれた願いだったのだと思います。それを拾い上げて大切にリフォームをしてくださったけやきさん。お願いしてよかったと、心から感謝しました。

 

この先もずっと大切にする、でもたくさん「使って」一緒に過ごすこともできるジュエリー。生まれ変わったのは、かたちだけではなく「もの」そのものでした。ものとの新しい出会いは、形を変えることでも生まれるのだなあと実感したリフォームでした。

今日の片付け IKEAの引き出し

思いがけず玄関の小さな引き出しを一つ手放すことになりました。

きっかけはありんこ。我が家は一軒家だからか、夏になるとありが発生。家の周りなら気にならないのですが、中に入ってくるのは苦手…。ある日玄関ドアからすぐの収納をみたらまあ!中までありが行列をなしていました。

原因はこの引き出し。

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気付かないうちに引き出しの裏になぞのシミができていて、そこをめがけてありが行進していました…。

 

もともとこの引き出しは鍵、時計、定期券など外出時に必要なものを入れておくためのもの。靴を履いて準備ができるので、忘れ物が減って重宝していました。でも家族はリビングにそういったお出かけグッズ入れを作ったためか、あまり使わずにいたよう。

 

あり問題が解決するまで引き出しを別の場所に置いていたところ、「あれ?これがなくても何とかなる!」と気付いてしまいました。引き出しは玄関にピッタリでなくすことなど考えもしませんでしたが、ありが再び来ることもないように手放すことになりました。

 

結局引き出しのあった空間はわたしの外出グッズ(サングラス、鍵、エコバッグ、図書館のカード、小さな鍵の入ったがま口)しか置かれていないすっきり空間になりました。私のものは一時的にぴったり合うお菓子の箱に入れました。今後もしかしたらそれらのために、収納グッズを探すかもしれませんが不自由はないので、様子をみて決めようと思っています。

 

最近モノを減らしていなかったため、すっきりして気持ちが良い片付けとなりました。

あって当たり前のものも、実は必要なかったりして。しばらくはそんな目で家の中を見渡してみたいと思っています。

読み応えのある児童文学 本木洋子『蘇乱鬼と12の戦士』

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ゆっくり更新になりつつあるこのごろ。4,5月は新しい仕事でなかなか更新できませんでした。でも、変わらず読書は欠かせません。むしろ忙しいときに読書に没頭すると、気持ちを切り替えるのにとても良いです。

 

さてそんな忙しい合間読書ながら、最後まで一気に読んでしまったのがこの作品。

電車で何度も乗り過ごしそうになりました。友人宅の前がたまたま作者のご自宅というご縁で、調べて出会った作品です。

 

子どものころは日本の作品が好きではなくて、外国文学ばかりを読みあさっていましたが、今はかえって日本の作品にとても心を惹かれます。本木さんの作品も、きっと子どもの私は良さがわからなかったかもしれない、と思います。実はこの作品、少し怖いんです。まるで今起こってもおかしくないかのリアルな事件。そして児童文学だけれど手加減なし!

 

主人公はあるとき父親から、父の故郷の街まで一人で尋ねるよう言われます。祖父から呼び出しがかかった、と言って。それまで父の故郷に行ったことのなかった主人公は、その謎の多さに驚きながら、日常のたいくつさを埋めるために出発します。そこは山伏の支配する世界。そこで大きな敵と戦う一員となります。

 

決してファンタジーではなく、リアルな日常の中に今の問題が組み込まれているので、大人の読書としても本当にスリリング。心をなくす新興宗教の大人たちの様子は、本当にぞっとします。心理的に怖いリアルだけではなく、自然の描写もまた本物でした。その中にも子どもと心を通わせる動物が現れたり、とにかくすべてに読みごたえがあって、一気に読んでしまいました。そして最後にはすぐに言葉を発せないほど、深く心に根付いた感覚がありました。

著者の他の作品も覚悟をして味わいながら読み進めたい。新しい素晴らしい作者との出会いが本当にうれしい読書でした。

 

 

美しいものを見る目は育つ 津上みゆき『時の景』

先日石垣島のことを知りたくて本を探していた時にはっとしたのは、

小川糸『ようこそ地球食堂へ』の表紙の美しさでした。

hon-nomushi.hatenablog.com

初めて読んだときは中身ばかりに目が行っていましたが、

改めてみてみたら美しい表紙に目を奪われました。

早速本の中を見て、この表紙が津上みゆきさんの作品であることがわかりました。

 

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津上さんの作品が本の中で、小さなノートブックや見開きのページなどに次々と現れて、息がとまりそうに美しい世界に没頭しました。こんな時は本当に幸せで、絵を味わうことを教わっていて本当によかったなあと思います。

 

私は大学でフランス文学科に所属していたのですが、入学してすぐにオリエンテーションも兼ねた草津への1泊旅行がありました。その帰りに寄ったのが軽井沢の現代美術館。それまでいわゆる名画の鑑賞はわりと好きだったのですが、モダンアートはなんとなくよくわからないものだったので、自分では見たことのないものでした。でもそこで友人たちや先生たちと見た作品はすごく面白くて、それ以来モダンアートが大好きに。

 

今思えば最初の出会いがすばらしい作品ばかりだったから、今も大好きなのだと思います。高校を卒業したばかりの学生に、容赦なく素晴らしいものを見せてくださった大学の先生方のおかげです。津上みゆきさんの作品のすばらしさがわかるのもあの時の出会いがあったからだと思います。そして美しいものを見る目を育てていただいたことに心から感謝しています。(肝心の勉強はあんまりしなかったけれど…)そして「美しいものを見続けるとすばらしいものがわかるようになる」ということも、自分の経験から深く信じています。

 

いつもの読書とはまた違う美しい絵にたくさん出会うひとときは、本当に幸福でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の片付け 使い切るという片付け 

お風呂場にあるマルセイユ石鹼。

だいぶちびてきました。うれしい。

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 以前は洗濯の時エリソデ汚れに使ったりするだけだったので、減ることがほとんどなく、2013年からずっと家にあるものでした。

肌が弱いため、からだはもっぱらお湯洗い。そんなに石けんを使うことがない我が家。なかなか減らず、ずっと残っているのにもやもやしていたのですが、

「洗濯だけ」の用途から「靴洗い」+「ふろがま洗い」の用途を加えたら、ようやくこのくらいの大きさになってきました。

 

靴はお湯で洗うと汚れが落ちやすいこともあって、おふろで洗います。「ふろがま洗い」は汚れた浴そうに直接石けんをこすりつけて、あとは手でさっとなでて流すだけ。お風呂には特別な洗剤は準備しておらず、このバスブラシと一緒に使っています。

www.gankohompo.com

 

バスブラシだけでもきれいに落ちるのですが、何となく洗うとすっきりするときもあって、今は石けんと併用しています。(石けんがなくなったらブラシだけの掃除になると思います)

 

使わないものを家から出すのも片付けですが、使っているものをさいごまで使い切ることも大切な片付け。本当はすべてを使い切ることができたらベストだと思うのですが、目に見えて使い切ったと思えるものはあまりないのが家の中。だからこの石けんのように使い切ることが用途をプラスして最後まで使います。あとは化粧品なども同じように使い切るよう心がけています。

 

あとどのくらいでなくなるかな?この石けんを使い切ったら、気持ちもお風呂場もすっきりしそうです。

 

 

はちみつ教です! 前田京子『はちみつ日和』

 

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更新、すっかりご無沙汰をしてしまいました。

石垣モード?というわけではなく、4月からの新学期にばたばたしておりました。

 

気候が暖かくなるにつれ、春の身体は一気にデトックスモード。

様々な不調や気持ちの揺れやすい春。

そんな時頼りになるのは、やはりはちみつ!

以前この本をご紹介しましたが、その続編にあたる作品が出ていました。

hon-nomushi.hatenablog.com

 

今回はさらにはちみつの奥深さを知って、身震いするほど感動しました。

『はちみつ日和』なんて、とっても甘いだけのはちみつのイメージを表しているようですが、実は体調不良のあらゆる場面で本当に有能なはちみつ。今回のこの本では、はちにまつわるプロポリスやビーボーレン(花粉)などの使い方に関しても書かれています。

著者の大好きなところは、難しい知識を今の私たちの生活に合わせてかみ砕いて教えてくださること。難しいことをこんなに生活に即する形で書いてくださるなんて!いつも知識をわかりやすく伝えてくださることに感動します。

 

そして前回も今回も、実体験も含め、はちみつの無限の可能性を教えていただいた気がします。

かつてはとても大切な抗菌剤であったこと、今もその効果は決して衰えないこと。

はちみつの魅力は、ただおいしいだけではないその効能と、不調に対する対応範囲の広さにあると思いました。

一つでも改善したい症状や、何か本に書かれていて気になることがあったら、ぜひ非加熱の本物のはちみつで体験されることをお勧めします。

 

私はプロポリスとワセリンを混ぜた軟膏でかゆみが軽減したり、家族はついにはちみつ点眼に踏み切り、ものもらいが治って感動していました。私は「はちみつ教!」と言いたいほど、はちみつに魅了され続けています。