ゆっくり更新になりつつあるこのごろ。4,5月は新しい仕事でなかなか更新できませんでした。でも、変わらず読書は欠かせません。むしろ忙しいときに読書に没頭すると、気持ちを切り替えるのにとても良いです。
さてそんな忙しい合間読書ながら、最後まで一気に読んでしまったのがこの作品。
電車で何度も乗り過ごしそうになりました。友人宅の前がたまたま作者のご自宅というご縁で、調べて出会った作品です。
子どものころは日本の作品が好きではなくて、外国文学ばかりを読みあさっていましたが、今はかえって日本の作品にとても心を惹かれます。本木さんの作品も、きっと子どもの私は良さがわからなかったかもしれない、と思います。実はこの作品、少し怖いんです。まるで今起こってもおかしくないかのリアルな事件。そして児童文学だけれど手加減なし!
主人公はあるとき父親から、父の故郷の街まで一人で尋ねるよう言われます。祖父から呼び出しがかかった、と言って。それまで父の故郷に行ったことのなかった主人公は、その謎の多さに驚きながら、日常のたいくつさを埋めるために出発します。そこは山伏の支配する世界。そこで大きな敵と戦う一員となります。
決してファンタジーではなく、リアルな日常の中に今の問題が組み込まれているので、大人の読書としても本当にスリリング。心をなくす新興宗教の大人たちの様子は、本当にぞっとします。心理的に怖いリアルだけではなく、自然の描写もまた本物でした。その中にも子どもと心を通わせる動物が現れたり、とにかくすべてに読みごたえがあって、一気に読んでしまいました。そして最後にはすぐに言葉を発せないほど、深く心に根付いた感覚がありました。
著者の他の作品も覚悟をして味わいながら読み進めたい。新しい素晴らしい作者との出会いが本当にうれしい読書でした。