hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

人の善意と悪意 マイケル・モーパーゴ『月にハミング』

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この本の主人公は作者の祖母。

実際にあった物語を主題としています。

 

戦時中のある日、突然イングランドの島に流れ着いた女の子。

口を利くことができず、なぜそこにやってきたのかわからない状態で

ある家族に迎え入れられます。

口がきけなくても過去がわからなくても

家族に温かくむかい入れられた女の子。

でも、その子がその当時戦争相手だったドイツ語のついた

毛布を手にしていたことを知り、

島の人々から嫌がらせを受けるようになります。

 

最後には女の子の素性が明らかになり、

女の子も話せるようになるのですが、

人の善意と悪意、それぞれが赤裸々に描かれている作品です。

戦争になり人に敵という相手が現れた時、

人がどんなふうに対峙するのか。

悪意に関して、怖いくらい赤裸々に描かれています。

けれどもそれと同時に、

言葉も話せない敵の子かもしれない女の子を

ただ家族として受け入れた島の家族もいたことを描いて、

人の善意もまた底知れぬものとして描かれています。

 

人は、善意も悪意もどちらも持っているものだと、

わたしは子どもによく話します。

自分が心も体も満たされていないと、

人の悪意というものはすぐに外に出てきてしまう。

そして正しいというものにもまた、

それぞれの立場で違いがあるということも。

 

戦争のおろかさをどれほど文学が訴えてきていても、

戦争がやまない今の世紀。

どうかどうか、苦しむ市井の人がこれ以上増えませんように。

戦争を題材にしたこの物語を読んで、

その思いを強くしています。