この本の主人公は作者の祖母。
実際にあった物語を主題としています。
戦時中のある日、突然イングランドの島に流れ着いた女の子。
口を利くことができず、なぜそこにやってきたのかわからない状態で
ある家族に迎え入れられます。
口がきけなくても過去がわからなくても
家族に温かくむかい入れられた女の子。
でも、その子がその当時戦争相手だったドイツ語のついた
毛布を手にしていたことを知り、
島の人々から嫌がらせを受けるようになります。
最後には女の子の素性が明らかになり、
女の子も話せるようになるのですが、
人の善意と悪意、それぞれが赤裸々に描かれている作品です。
戦争になり人に敵という相手が現れた時、
人がどんなふうに対峙するのか。
悪意に関して、怖いくらい赤裸々に描かれています。
けれどもそれと同時に、
言葉も話せない敵の子かもしれない女の子を
ただ家族として受け入れた島の家族もいたことを描いて、
人の善意もまた底知れぬものとして描かれています。
人は、善意も悪意もどちらも持っているものだと、
わたしは子どもによく話します。
自分が心も体も満たされていないと、
人の悪意というものはすぐに外に出てきてしまう。
そして正しいというものにもまた、
それぞれの立場で違いがあるということも。
戦争のおろかさをどれほど文学が訴えてきていても、
戦争がやまない今の世紀。
どうかどうか、苦しむ市井の人がこれ以上増えませんように。
戦争を題材にしたこの物語を読んで、
その思いを強くしています。