hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

移民、フランス ハン・ユンソプ『ボンジュール、トゥ―ル』

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わが家では朝日小学生新聞をとっているのですが、

その書評で紹介されていた本を読んでみました。

 

主人公は韓国から親の仕事の都合でフランスに移り住んだ男の子。

パリからトゥ―ルという小さな街に引っ越すことに。

そこで借りた家の机に、ひっそりと彫られたハングルを見つけます。

彫った人に興味を持って、家主さんを通じて以前の居住者を探しはじめます。

同時に転校先の学校で、

韓国人か日本人かわからない、愛想のない同級生に

出会い、反発しながら交流を深めていきます。

 

フランスの実際にある地を舞台にしながら、

祖国や移民という立場に想いを馳せる主人公の姿。

わたしがフランスで暮らしていたころ、

大学にたくさんいた留学生や移民の人たちのことを

思い出しました。

 

この物語では謎を解いていく主人公と、

謎の同級生が深く関わり合っていくのですが、

隣にいる人のこと、知っていると思っている国のこと、

実は知らないのではないかという視点を

作者は忘れずに描いています。

そしてその視点は、

とてもやさしさに満ちていました。

 

皆がそれぞれ隣人に偏見なくいられたら、

戦争なんて起きないのに…。

といいつつも、自分にもある偏見や思い込み。

だからこそ本を読むことではっとするのですよね。

 

書評で見つけなかったらきっと読まなかった1冊。

出会って感謝の1冊でした。