hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

生きることが辛いとき ステファニー・ランド『メイドの手帖』

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ある休日、この本を読み始めてから途中でやめることができず、

キッチンの椅子に座ってずっと集中しきってしまったこの本。

この読書の間、わたしは確実に主人公と一緒にいました。

時に涙を流したり、明らかに心ここにあらずのわたしを見ていて、

家族はさぞ不安を感じたことでしょう。

 

それほどまでに集中しきって読んだこの1冊。

作者は若くして母親となり、誰の助けも得られなかったために

一度ホームレスになります。

その後その場から立ち上がるために、他人の家を掃除してお給料を得て、

やがて自らが本当に望む場所での暮らしを手に入れます。

 

「他人の家を掃除して」なんてとても簡単に説明してしまったけれど、

その掃除がいかに過酷なものなのか、

時間的な制約のある中で本当に汚れ切った場所を片付けるとはどういうことか、

過酷な労働のわりに賃金がどれほど安かったか、

作者は自身の経験からリアルな現実を語ってくれます。

 

家族はいるけれど助けてくれはせず、

子どもの父親は暴言で彼女を支配する。

シングルマザーとして子どもを育てる日々。

子どもは住んでいるアパートのせいで病気になり、

子どもを見てくれた医師には

「もっとがんばらないと」

と言われる日々がどんなものだったのか。

本の中では作者の感じている孤独、再びホームレスとなる恐怖、

社会的な補助を受け取りながらの買い物がどのようなものであったのかが

赤裸々に語られています。

 

それでもその絶望的な場所から、作者は自分の望む方へ歩いてきます。

そして本当に暮らしたかった場所へと自分を動かしていきます。

サブタイトルにあるように、作者は子どもとの生活をブログに

「書く」ことで自分を支えていきます。

 

 

孤独、絶望が書かれる中で際立ってわたしの中に強く残ったのは、

彼女がどんな時もオンラインで大学の勉強を続け、

ブログを書き続けたということです。

人はどんな状況であっても自分の望む方向へ歩いて行けるのだと

強く指し示してくれる1冊でした。

 

彼女がモンタナという場所へ惹かれるきっかけとなった本、

"The River Why"を読んでみたくなりました。

そしていつか私もモンタナに行ってみたいな。