hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

頼りになる一冊 (再び)瀬戸口しおり『私の手料理』

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今年は梅の出がすごく早かったみたいで、いつもの八百屋さんで注文が間に合いホッとしているところ。梅雨もあっという間に終わってしまいました。今年の梅干しもしっかりと梅酢があがりました。

 

以前もご紹介した本ですが、

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味噌作りのときと梅仕事の時は、この本をとても頼りにしています。ネットでもほかの本でも、いくらでも作り方は載っているのですが「この本を見れば安心」という感覚はやはり本だからのように思います。いつでも手に取れるから安心なのと、初めての手作りから寄り添ってくれているから、わたしの保存食作りにはなくてはならない1冊です。工程も1つずつ写真で丁寧に追われているから、迷った時は必ずこれで確認します。

 

瀬戸口さんの梅干しは重しのないタイプ。完熟させた梅を使います。手作りだからすべてを本の通りにする必要はないですし、毎年なにかと作り方は変えています。でも基本は瀬戸口さんのレシピと決めておくと、いつでもそこに戻れる安心感があります。今年もお世話になりました。

 

流行は追わないから 『ありのままが美しいパリマダムグレイヘアスタイル』

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この何年も、インテリア関連以外の雑誌を購入することがありません。

全く読まないわけではないですし「これいいな!」と思うこともたくさんあります。なのにファッション雑誌を買わなくなったのはなぜだろう?たぶん自分の着たい物と方向性が違うからだと思います。

 

化粧品も一般のいわゆるカウンターでは購入しなくなってしばらくたつので、美容情報は熱心に仕入れない(敏感ですぐかゆくなってしまうため)。

コーディネートなども素敵だと思うけれど、知りたいのは「今の旬だけファッション」ではなく(雑誌だけでコーデする方はどうやってお金との折り合いをつけているんだろう?)、自分に似合う形や色の方に興味がある。

そう考えると、雑誌を買って眺めるのはほんの数ページだけであることがわかって、どんどん買わなくなっていきました。でも何か参考になるものがないと、決して生まれつきおしゃれではないわたしは、みずぼらしくなっていきそう…。そんな時に頼りになるのはやっぱり本でした。

 

あるとき本屋さんで見かけた美しい表紙の女性。中身をみて「これだ!」と思いました。わたしが知りたかったのは今の流行ではなくその人なりのスタイルを確立している生身の人。テーマは「グレイヘア」ですが、見ているだけで洋服とのコーディネート、生き方などいろいろな視点からその方のことを知ることができます。洋服を着ることがその人の個性をすべて表していて、それが本当に素敵なのです。

 

そして誰一人として同じスタイルの人がいない。自分の心地よさ、似合うを追求しているがゆえの素敵さでした。目指したいのはこの美しさだと思いました。やっぱりしばらく一般的な雑誌とは離れて、本で素敵な人を探そうと思った時間でした。

やっとみつけたキッチンスポンジ

以前お気に入りだった亀の子だわしのスポンジ。わたしにとって、色や耐久性などすべてが〇のものでした。

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すごくお気に入りで何度も買おうと思っていましたが、一度切らしたときに近くで購入することができず。急ぎでパックスナチュロンのスポンジを使ってみたらこれが思いのほかヒットでした。値段は1つ150円くらい。いつ交換すればよいのかわからないほどへたらず安く、本当に優秀です。

 

ただ一つだけ気になったこと。色がピンクや緑だったのです。素材が優秀でもこの色はキッチンで悪目立ちするので、あんまり好きではありませんでした。

ですが先日ついに、白いパックスナチュロンスポンジを発見!

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ああ、これでもうスポンジ難民にならずにすみます。実は家族にとって色より何より、このパックススポンジが機能的に一番のお気に入りだったそうです。色が白になった今、家族全員満足。

 

ずっとこれを使うので、ぜひ作り続けてほしいなあと切実に願っています。めずらしく買いだめ(普段は全くしません)しておこうと思うくらいお気に入り。

迷わなくてよい買い物は、とっても幸せです。

 

 

 

 

 

あったことをわすれない 伊藤詩織『ブラックボックス』

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今まで紹介してきた本とは異なるノンフィクション。

 

作者は仕事で知り合った人に暴行され、その事実を自分で書き、本になったのがこの著書。ただ時間の尺度では過去のことだけれど、著者は何度も何度もその時間を繰り返し再生し生きて、この本を書かれたのだと思います。

 

作者が生きてきた時間。子どものころからジャーナリストになる夢を持って留学。自分でお金を稼ぎながら生きて、そして暴行に合った経緯も何も隠さず描かれています。暴行がそこまで1人の人を打ちのめすほどのものだということを、そしてすべてを根こそぎ変えてしまったその暴力さを、痛いほど感じました。そしてなかったことにしないために、本当にたくさんのことをしなければならなかったこと。ご本人だからこそ、語れた、たくさんのその後のこと。暴行は辛い事実だけれど、読むことで触れたこと、心が痛んだことを忘れずにいたいと思いました。

 

今でもそのような被害が起きることが、他人ごとではないことは親でもある私が覚えておくべきことなのだと強く思いました。決して向き合うのに簡単ではないけれど、顔も名前もさらけ出しながら1人の人がさらけだした文章は、忘れないために心に刻んでおくのに十分でした。そして苦しみがずっと続いている事実からも目を背けない、背けられないこと。

 

使っていなかったけれど、捨てなかったもの

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こてこて。昔よくあったようなデーンと石が主張する指輪。亡くなった祖母が昔々、私へと準備してくれていたものでした。20歳のプレゼントにといただいていたものだそうですが、20代にこのデザインは重すぎて、使うことなくしまったきりのものでした。

 

片付けを初めて使わないものを手放していくうちに、何度もどうしようか悩みました。

「使っていない」し、持っていても「わくわくしない」。手放すものに当てはまることがたくさん。ただ、いつものように処分することに抵抗がありました。街のジュエリー買取では土台の金しか評価されないのではないかという心配がありましたし、石自体の価値がよくわからなかったので、価格の査定に自信がなかったのです。

 

「わからない時はその道のプロに聞いてみよう!」

相談先として思いついたのは、婚約指輪もつくっていただいたZelkova K ジュエリーデザイナーのけやきさん。ジュエリーのことならけやきさんに、と心から信頼している方です。

++ Zelkova.K / ゼルコーバ.K ++

 

実物をけやきさんに送って確認していただくと、石が本当に美しいもので、なかなか手に入らない美しい珊瑚だということがわかりました。赤が美しくて手放すにはもったいないとのこと。それを伺って決心がつき、指輪からネックレスにリフォームしていただくことにしました。

 

デザイン画を送っていただき、最終的にこの形で決定。 

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(画像はZelcova.Kさんページよりおかりしています)

先端の丸いネジネジがロングチェーンの数か所についていて、ロングにもショートにもアレンジ可。美しいだけではなく実用的で、普段も惜しげなく使うことができます。

 

そしてとっても驚いたこと。

指輪の時は重い印象だった珊瑚が、ネックレスになったら生まれ変わったように生き生きしていました。初めてつけたときには祖母からの応援が石に込められているように感じて、涙が出てきたほど。きっとそれは錯覚ではなく、祖母がこの珊瑚に込めてくれた願いだったのだと思います。それを拾い上げて大切にリフォームをしてくださったけやきさん。お願いしてよかったと、心から感謝しました。

 

この先もずっと大切にする、でもたくさん「使って」一緒に過ごすこともできるジュエリー。生まれ変わったのは、かたちだけではなく「もの」そのものでした。ものとの新しい出会いは、形を変えることでも生まれるのだなあと実感したリフォームでした。

今日の片付け IKEAの引き出し

思いがけず玄関の小さな引き出しを一つ手放すことになりました。

きっかけはありんこ。我が家は一軒家だからか、夏になるとありが発生。家の周りなら気にならないのですが、中に入ってくるのは苦手…。ある日玄関ドアからすぐの収納をみたらまあ!中までありが行列をなしていました。

原因はこの引き出し。

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気付かないうちに引き出しの裏になぞのシミができていて、そこをめがけてありが行進していました…。

 

もともとこの引き出しは鍵、時計、定期券など外出時に必要なものを入れておくためのもの。靴を履いて準備ができるので、忘れ物が減って重宝していました。でも家族はリビングにそういったお出かけグッズ入れを作ったためか、あまり使わずにいたよう。

 

あり問題が解決するまで引き出しを別の場所に置いていたところ、「あれ?これがなくても何とかなる!」と気付いてしまいました。引き出しは玄関にピッタリでなくすことなど考えもしませんでしたが、ありが再び来ることもないように手放すことになりました。

 

結局引き出しのあった空間はわたしの外出グッズ(サングラス、鍵、エコバッグ、図書館のカード、小さな鍵の入ったがま口)しか置かれていないすっきり空間になりました。私のものは一時的にぴったり合うお菓子の箱に入れました。今後もしかしたらそれらのために、収納グッズを探すかもしれませんが不自由はないので、様子をみて決めようと思っています。

 

最近モノを減らしていなかったため、すっきりして気持ちが良い片付けとなりました。

あって当たり前のものも、実は必要なかったりして。しばらくはそんな目で家の中を見渡してみたいと思っています。

読み応えのある児童文学 本木洋子『蘇乱鬼と12の戦士』

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ゆっくり更新になりつつあるこのごろ。4,5月は新しい仕事でなかなか更新できませんでした。でも、変わらず読書は欠かせません。むしろ忙しいときに読書に没頭すると、気持ちを切り替えるのにとても良いです。

 

さてそんな忙しい合間読書ながら、最後まで一気に読んでしまったのがこの作品。

電車で何度も乗り過ごしそうになりました。友人宅の前がたまたま作者のご自宅というご縁で、調べて出会った作品です。

 

子どものころは日本の作品が好きではなくて、外国文学ばかりを読みあさっていましたが、今はかえって日本の作品にとても心を惹かれます。本木さんの作品も、きっと子どもの私は良さがわからなかったかもしれない、と思います。実はこの作品、少し怖いんです。まるで今起こってもおかしくないかのリアルな事件。そして児童文学だけれど手加減なし!

 

主人公はあるとき父親から、父の故郷の街まで一人で尋ねるよう言われます。祖父から呼び出しがかかった、と言って。それまで父の故郷に行ったことのなかった主人公は、その謎の多さに驚きながら、日常のたいくつさを埋めるために出発します。そこは山伏の支配する世界。そこで大きな敵と戦う一員となります。

 

決してファンタジーではなく、リアルな日常の中に今の問題が組み込まれているので、大人の読書としても本当にスリリング。心をなくす新興宗教の大人たちの様子は、本当にぞっとします。心理的に怖いリアルだけではなく、自然の描写もまた本物でした。その中にも子どもと心を通わせる動物が現れたり、とにかくすべてに読みごたえがあって、一気に読んでしまいました。そして最後にはすぐに言葉を発せないほど、深く心に根付いた感覚がありました。

著者の他の作品も覚悟をして味わいながら読み進めたい。新しい素晴らしい作者との出会いが本当にうれしい読書でした。