夏になるとスイカやとうもろこし、枝豆を味わうように、夏の読書に欠かせない作品。
『わたしたちの島で』。
わたしが作者リンドグレーンを知ったのは小学2年生。やかまし村シリーズが大好きになったとき、初めて作者や舞台となった国を知りたい、と思ったのです。それから何冊も何冊もリンドグレーンの作品を読み続け、スウェーデンという国は深く私の脳に刻まれました。同時に翻訳という仕事について、知るきっかけともなりました。
最愛のリンドグレーン作品の中でも長編であるこの作品は、小学校高学年に初めて手に取った気がします。読み返すと面白いのは、いつでも新しい発見があること。子どものころは幼い主人公たちに感情移入をして、今は大人の主人公に感情移入をして、いつだって自分の気持ちに寄り添う主人公を見つけられるのが、この作品のチカラだと思うのです。
母親代わりのお姉さんマリーン、子どものようにDIYはことごとく失敗する小説家の父、3人の男の子は、夏の間ウミガラス島に別荘を借ります。そこで出会う大人のような子どものチョルベンや、近所のやさしい人たち。様々な騒動が描かれていますが、子どもも大人もこのウミガラス島に魅せられて、いつしかここを生きていく場所に選びます。
今回は心の中からあふれる夏への想いが強く心に残りました。いつだって読み終えるたびに静かな感動を感じ、この本に出会えたうれしさでいっぱいになるのです。いつか本の中のように、全身で季節を感じるお休みを過ごしてみたいです。