hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

季節には合わないけれど… ローラ・インガルス・ワイルダー『長い冬』

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時折、むしょうに大草原の小さな家シリーズを読みたくなることがあります。

それも、全部一気に初めから終わりまで。

どうやらその衝動は毎年あるようで、2年前も記事にしていました。

hon-nomushi.hatenablog.com

 

大草原の小さな家シリーズは、訳も装丁もいろいろなものが出ているけれど、

昔学校の図書館にあった福音館のものが一番好きで、

大人になってから全て揃えました。

 

その後の主人公ローラが大人に近づく年代の話は、

岩波少年文庫で読んでいました。

わたしが読んだときは鈴木哲子さんの訳で、写真の『長い冬』は

上下に分かれていたのだけれど、今出版されているものは谷口由美子さんの訳で、

1冊になっていることに気が付きました。

 

 

1冊になっている『長い冬』は今回初めて読んでみたけれど、

以前は感じた翻訳の違和感も少なくて、

一気に読み進めてしまいました。

途中でやめることが苦痛なくらい。

 

なぜこんなにもローラの作品が好きなのか。

大人になり、今の生活をするようになって

わたしなりの考えに至ったのですが、

ローラの作品では、

生活することが生きることと直結していることに

安心感を覚えるからではないか、と思います。

 

今の生活は誰かに、何かを頼らないと生活が成り立ちません。

家を作るのは、建築の人に頼む。

ベーコンは、買ってくるもの。

ローラの生活では、

家は近くの森から木を切ってきてお父さんが建てる。

ベーコンは豚を育てて、その後にさばいて、燻製にする。

生活が自分の手と結びついた先にあることを、

読みながら人は安心するのではないかと

思うのです。

 

今からそれらを取り戻す、だとか

昔はよかったというつもりはありません。

ただ、生活に自分の作ったことやものを加えることは、

心が満たされることと一致しているように思うのです。

きっとその当時はそうするしかなかっただろうけれど、

あまりに生活が自分の手から離れすぎた今、

かえって安心や充足を感じにくくなっているのではないかと

思うこのごろです。

だからこそ、ローラの物語を求める人が、

絶えないのだと思います。

 

なんだかあつく色々述べてしまいましたが、

一冊にまとまった『長い冬』、本当に素敵でした。

何度読み返しても面白い本と出会えて、

本当によかった。

ぜひぜひ、読んでみませんか?