"Fucked at Birth:" この表紙のタイトルが目に飛び込んできて、
思わず読んでしまった作品。
訳者はこの言葉を「産まれた時からどん底」と訳されています。
作者はアメリカのジャーナリスト。貧困問題の記事を書く作者が、
コロナの中で貧困にあえぐ人々の様子をこの本で書いています。
アメリカというと優雅なお金持ちの様子をテレビや映画で
観ている反面、貧しい人と富む人の格差について
最近は良く新聞や雑誌で見かけるようになったように思います。
そして、人種差別の問題。
一部の報道を見ているだけではわからない、
現在のアメリカを生きる人たちと
コロナ禍で激変した人々の生活が綴られています。
例えばコロナで何が変わるか。
在宅で仕事をすることが増えた現在、オフィスビルの賃貸を解約する
大手企業が増える。
それによってフロア清掃員が首を切られ、
労働者たちは仕事を失う。
仕事を失い、家の家賃が払えなくなる。
そして、ホームレスになっていく現状を
著者は見つめています。
その様子を読んでいると、逃げ場のない貧しさが
自分の足元にも忍び寄っているように感じ、
とても怖く感じます。
でも、実はわたしたちの国でも同じようなことは
起きていて、自分がそれを知らないだけではないかと
思います。
私自身には家があり、食べ物にも困ってはいないけれど、
それでもじわじわしのびよっている物価高。
アメリカの現状を読んでいても、なんだか他人ごとには
思えないのです。
以前は可能だった貧しい人が這いあがれるアメリカンドリームは、
もはや現実的ではないのかもしれません。
自分の国ではどうだろうか?
自分の身はどうなるのだろうか?
そんなことも考えながらの読書となりました。