hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

ずっと2冊の本 池澤夏樹『きみが住む星』

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小説を読むほどの元気はなくて、テレビのペースにはついていけない。でも何か別の世界にひたりたい。そんな時におすすめの本です。出会ったのは中学生の頃。当時購読していた通信教育の雑誌に、新刊案内として載っていました。

 

あの時、惹かれたのはこの表紙の美しさでした。なんて美しい色があるのだろう。中を読んでみたら、これは朝焼けの写真だということがわかりました。離れたところに住む恋人にあてた手紙というかたちで、文章と写真が組み合わせてあります。

 

この本に出会ったとき、中学生だったわたしはすごく狭い世界にいました。日本の中でもあまり旅行をすることはなかったですし、ましてや世界はもっと想像できなかった。ここは世界のどこなのだろうと、暗記するほど美しい写真を眺めたものでした。

 

今も本に出てくる景色はどこなのだろうと思い続けていて、似たような場所があるとつい行ってみたくなります。いつかこの朝焼けを見てみたい。見たらわかるはず。それほど何度も眺めて記憶されている場所たちだから。

 

大人になってからはプレゼントとして大切な方に贈った本。今、我が家に2冊あるのは家族に以前プレゼントしたから。結婚して同じものが2冊になりました。そのうち1冊はどなたかにいずれ差し上げようと思っていますが、何となく2冊のまま。シンプルなものの少ない生活が落ち着くけれど、たまにそんな余分があっても良いな、と思っています。