長崎の小浜温泉近くに、タネトという野菜の直売所があります。
プラスチックフリーで地元の元気な野菜を扱っているところ。
そこによく岩崎さんのお野菜があって、種取り農家さんという存在を
初めて知りました。
なるべく野菜は元気なオーガニックのものを食べたいと思っていましたが、
神奈川にいるときは生産者の方にまであまり想いが行き届いていませんでした。
けれど長崎で暮らしたことで、
生産者の方の顔がしっかり見える関係が沢山できました。
この本は岩崎さんの種取り、農業の様子、日々の静かな戦いが
良くわかる本でした。
戦い、というとなんだかですが、美味しい野菜を作るために
どれほど苦労なさったかが良くわかる本です。
本当はオーガニックであれなんであれ、食べ物は沢山の人の手を経て
スーパーに並んでいることを、長崎に住むまでは体感として全く
理解していなかったように思います。
季節の野菜はある程度理解していたけれど、
野菜の取れない端境期(はざかいき)があることも、
タネトに通ってよくわかりました。
野菜があるのは当たり前ではないことは、
自分でにんじんを育ててみて初めてわかりました。
そして種というものに対して、畏敬の念を持ちました。
だって、あんなに小さな一粒から、
緑がでてきてにんじんができるのです。
初めて小さなニンジンを畑から掘り出したとき、
静かな感動を覚えました。
農業に興味のない方にも、
岩崎さんの本を通して
ぜひ種のすばらしさに触れてみてください。