hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

読みたかった本を読む アンジー・トーマス『ザ ヘイト ユ―ギヴ』

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「あ、これ読みたい」と本屋さんで思っていても、

本屋さんを出ると忘れてしまっていることはありませんか?

わたしはしょっちゅうです。

 

この本もすごく印象的なタイトルだったので、読みたいと思ったのに

しばらく忘れていて、最近図書館で再会。

ちょっと長い物語だけど、読んでみて本当によかった。

人種差別の問題を正面から扱いながらも、

主人公たちのキャラクターが本当に魅力的で、

本の中の主人公について、誰かとずっと語り合いたいくらいでした。

 

主人公はある日、幼馴染の男の子と車に乗って家に帰る途中、

白人の警官から呼び止められ、結局男の子は射殺されてしまいました。

その後警官が正しい行いをしたのかについて、世間は議論をしたり暴動が起きたり、

主人公はその中で唯一の目撃者として発言するかどうか悩みます。

家族は治安の悪い地域に住んでいますが、

主人公はお金のかかる私立に行っていて、黒人はほぼいない学校。

人種差別、地域格差、家族の問題など、

本当に幅広い問題が取り上げられているけれど、

それらがすべて主人公に関わる現実的な問題として取り上げられているのが、

この本のすごいところ。

 

対岸の火事ではなく、実際に体験し悩む主人公の姿を見て(読んで)いると、

暴動を起こした人たちのバックグラウンドや、

今までの歴史について学ぶことなど、

今起きていることの現実を知る手がかりにもなっていきます。

小説としてもとても楽しめるのに、

きちんと現実を伝えるドキュメンタリーのような要素もあるところが

この本のすごいところ。

 

中でも一番気に入った登場人物は、

主人公のボーイフレンド、白人の男の子です。

家のある地域とは全く異なる場所にある学校で、

主人公はある意味本当の自分を少しだけ隠しながらも、

本当に彼を大好きになっていくのです。

そのあたりの本音との格闘も、とても面白かった。

 

ただの読み物としてだけではない面白さ、

現実の厳しさをしっかり捉えつつも希望を持たせてくれるストーリー展開に

脱帽した1冊でした。