hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

料理、環境、わたしたちの生活 有元葉子『簡単料理は簡単か?』

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このタイトルを見たら、お料理に興味がある方が手に取られることが

多いかもしれません。著者も料理家の有元さんですし。

でもこの本は、実は環境の本です。

今わたしたちの地球が大変なことになっている現実。

それを台所の物からつなげて考えて、

しいてはわたしたちの生活の在り方を問う本になっています。

 

例えば、

日本のソウルフードであるだしの煮干し、

昆布が取れなくなってきている。

夏のカラッと晴れた日が少なく、梅干が干せなくなっている。

どちらも地味で縁の下の力持ちな食材たちだけれど、

家の基礎となるような食材ばかり。

それを失ってしまったら、

わたしたちは何を食べて行ったらいいのだろう、と

背筋の凍る思いをします。

 

そういうわたし自身も海外に出るまで、

だしについて考えたことなどほとんどありませんでした。

あって当たり前すぎて、何も気づいていなかったのだと思います。

けれどフランスで3ヶ月ほど暮らした後、突然

「ああ、魚が欲しいなあ。魚のスープが飲みたいなあ。」

とからだが求めたことがありました。

あの時の感覚。からだが魚を求めた時、

わたしの一部は魚でできているのだなあと思ったものです。

 

そういう本当に地味であって当たり前のだしを失ったら、

からだはどうなっていくのでしょうか。

きっと健康に生きられないのではないかと思います。

そして健康に生きられない環境を、便利さ、楽さと引き換えに

どんどん作っていっている今。

だからこそ、今の自分が何を選択するかが、

この先の未来を良くするかに関わってくることが

本当に身にしみました。

 

だしの話に戻ると…。

うちの子は本当に大切に育てられたものを、

丁寧に料理した給食の出る保育園で育ちました。

だから、今でもだしをしっかりとったお味噌汁が大好き。

昆布を水につけているものも、ごくごくと自分から飲んでいます。

子どもの身体を作っている昆布や煮干し、

大切に作られた野菜を守りたいから、

多少高くても生産者の方を応援する意味で

ちゃんと食材を選ぼうと思います。

 

次の本の一文を読んで、

わたしは何を急いでいたんだろうと思いはっとしました。

 ところが今は、とにかく簡単に作れることや、時短料理ばかりがもてはやされる。手間を省き、スピードアップすることばかりが家庭料理に求められている。みんな、忙しすぎるのでしょうか。でも料理をする時間を削って、空いた時間で何をするのかな、って思ってします。家族や自分のために料理を作ること以上に、大事なことがあるかしら、と。