村上春樹『雨天炎天』をこよなく愛しています。
その舞台となっているギリシャのアトスについて書かれたこの本を、
大好きなセラピストさんがお読みになっていて気になって。
お正月明け、ようやく図書館に届きました。
舞台となっているのは女性が決して入ることのできない
聖なる地、アトス。
アトスには巡礼者と聖職者の男性しか入ることができません。
だから、わたしは本でしかアトスの様子を知ることはできません。
だからこそかもしれませんが、
アトスという地に興味深々で、
その好奇心を満たしてくれるのが本なのです。
著者はアトスが本当に未開の地だったころから
何度も訪れ、変わりゆく地に足を運んでいます。
数年間でいつのまにか道路が整備され、
歩くしかなかった道を車が通るようになり、
遠くの修道院まで行くのに一日かからなくなったそうです。
それゆえ修道院でいただくおもてなしのお菓子やお酒が、
長く歩く巡礼の後に身体にしみわたっていたものの
ありがたみやおいしさが軽減してしまったというところが
とても印象に残りました。
足でしか歩いて行くことのできない場所があることは、
わたしにとって旅のわくわくをかきたててくれるものだけれど、
時間制限のたくさんある現代では、行きたい場所に行けないという
ジレンマを生むものなのかもしれません。
想像するしかない、行くことのできない場所が
地球上にあるということ。
それを本というもので知ることができる幸せ。
本があって、書いてくれる方がいらしてよかった。
そんな風に感じる読書でした。
寒いみたいですが、皆さま良い週末をお過ごしくださいね。