hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

ミニマムな台所へ ドミニック・ローホー『少ないもので料理する』

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先日、台所に2つものが増えました。

スライサーとヨーグルトメーカーです。

どちらも悩みに悩んで注文したものだけれど、

モノが増えたのは事実。

 

料理が確実に楽しくなりましたが、

キッチンのものはあれやこれやと新しいものが出てくる世界。

はたしてどれほどのものがあれば、

キッチンで快適に料理できるのか?

今年はキッチンのミニマム化をめざしているので、

増やしたばっかりだけれどモノの量には敏感です。

 

そんな中参考になるのが、

このミニマムな台所について書かれた本です。

著者はキッチンが小さかろうが大きかろうが、

快適に料理をすることは可能だと教えてくれます。

そのためには必要なものだけを台所に、と書かれています。

そのミニマムな台所でどのように食材を選ぶか、

どのように食器を選んだり収納したりするか、など。

 

そして合間に出てくる本の引用で、

村上春樹の著作の食事を作るシーンが

良く引用されていました。

思い出すと確かに!主人公がおいしそうな食べ物を

丁寧に作るところがたくさんある作品ばかり。

 

今の台所であまり食事を作る気がおきなかったり、

食べ物と向き合う気持ちになれないのだったら、

ぜひこの本を一読されると良いと思います。

快適な台所への一歩になること請け合いです。

生涯行くことのない地へ想いをはせる 川俣一英『エーゲ海の修道士』

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村上春樹『雨天炎天』をこよなく愛しています。

その舞台となっているギリシャのアトスについて書かれたこの本を、

大好きなセラピストさんがお読みになっていて気になって。

お正月明け、ようやく図書館に届きました。

 

舞台となっているのは女性が決して入ることのできない

聖なる地、アトス。

アトスには巡礼者と聖職者の男性しか入ることができません。

だから、わたしは本でしかアトスの様子を知ることはできません。

だからこそかもしれませんが、

アトスという地に興味深々で、

その好奇心を満たしてくれるのが本なのです。

 

著者はアトスが本当に未開の地だったころから

何度も訪れ、変わりゆく地に足を運んでいます。

数年間でいつのまにか道路が整備され、

歩くしかなかった道を車が通るようになり、

遠くの修道院まで行くのに一日かからなくなったそうです。

 

それゆえ修道院でいただくおもてなしのお菓子やお酒が、

長く歩く巡礼の後に身体にしみわたっていたものの

ありがたみやおいしさが軽減してしまったというところが

とても印象に残りました。

足でしか歩いて行くことのできない場所があることは、

わたしにとって旅のわくわくをかきたててくれるものだけれど、

時間制限のたくさんある現代では、行きたい場所に行けないという

ジレンマを生むものなのかもしれません。

 

想像するしかない、行くことのできない場所が

地球上にあるということ。

それを本というもので知ることができる幸せ。

本があって、書いてくれる方がいらしてよかった。

そんな風に感じる読書でした。

 

寒いみたいですが、皆さま良い週末をお過ごしくださいね。

寝る本を読んで眠れなくなった話 ショーン・スティーブンソン『SLEEP』

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昨日の夜はあまり眠れませんでした。

せっかくこの本を読んだのに…。

皮肉なことに、眠りについて考えすぎたせいか

かえって眠れなくなってしまいました…。

 

ー午後14時までしかコーヒーを飲まない

ー夜パソコンを使わない

ー運動をする

を家族が実践したところ、よく眠れるようになったというので

わたしも読んでみました。

 

本を読んでみると、

今のひとの生活はどれほど人を眠らなくさせているかを

思い知ることになりました。

つねにさらされているブルーライト、不規則な仕事、

カフェインや添加物たっぷりの食事に、運動不足。

これらが重なると確実に眠りが浅くなる、と指摘する著者。

たくさんの項目が挙げられていましたが、

家族が実践した項目は先ほどの3つ。

 

それではわたしも、と改善点を考えて見たけれど、

基本的にスマホはもともと夜寝室に持ち込まない、

7時以降は見ない。

運動は少し足りていないかな?

わりと項目はクリアしているのだけれど、

あまり眠れていないなあというのが実感でした。

 

わたし自身は結構夜にトイレに行きたくなったりして

目が覚めることがあるのが悩みです。

そして出産してからは特に、

子どもの声や様子がおかしいとすぐに起きてしまう…。

これは更年期もあるのかしら?

 

そのあたりの記述は本書ではなかなかされていないけれど、

眠りに問題がある方は一読されるのが良いかもしれません。

不規則な生活をされている方には、

「改めなきゃ!」と思うポイントがたくさんあるかもしれません。

 

 

映画から興味を持って ヘミングウェイ『移動祝祭日』

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シティオブエンジェル」

という映画をご存知でしょうか。

天使と医師が恋をするお話なのですが、

わたしはこの映画が大好き。

久しぶりに見たいと思って、見返してみたら

このヘミングウェイの小説が出てくることを思い出して、

かりてきました。

 

そういえば数年前に映画を観た時も、

この小説の中から映画のなかで引用されている言葉が

印象的で読んでみたのですが、

なんだか本の翻訳が読みにくくて、

その時はあまりおもしろく感じられませんでした。

 

けれど今回見つけた高見浩さんの翻訳では、

解説ももりだくさんで、とにかく面白くて、

この『移動祝祭日』を心から堪能しました。

 

映画の中で触れられている、牡蠣を食べた時の味。

白ワインとの味わいの深化。

ヘミングウェイをもう一度、

きちんと読んでみたくなりました。

 

余談ですが映画に出てくる主人公の山荘が、わたしの理想とする

家のイメージにぴったりなのです。

だから忘れられなくて、ずっと見続けています。

カットも大好き。

そして、歌との出会いも鮮烈でした。

Goo Goo Dolls のIrisは、この作品のとりこになってから

わたしの音楽リストから消えたことがありません。

 

もしも機会があったら、

映画も本もあわせて楽しんでいただきたいな。

冬の静かな夜にぴったりの映画だと思います。

絵から生まれる物語の宝箱 ローレンス・ブロック編『短編回廊』

         

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あけましておめでとうございます。

簡単におめでとうと言えないお正月でしたが、

それでも日々は過ぎていく。

できることをできる範囲でやっていきます。

 

本の時間もいつもより短めでしたが、

そんな時に最適なのが短編集。

以前ご紹介したこの関連作品。

hon-nomushi.hatenablog.com

けれど、今回の短編集はホッパーだけではなく、世界中の様々な絵が

題材になっていて、そのせいかホッパーだけの『短編画廊』よりも

小説のジャンルももっと幅広かったように感じました。

 

一編一編があまりにも違い、絵画の時代も様々なので、

1つ読むたびに前の作品を忘れ、

それぞれの世界に没頭して楽しむことができます。

だからこそ時間のないときに、ぴったりの1冊。

 

実はまだ読み終わっていないこの作品。

合間に別の本も取り混ぜて読んでいたからこそですが、

もう少し楽しめそうです。

 

今年も少しずつ自分の勧める本をご紹介していきます。

みなさま、良い年になりますように!

 

〈お知らせ〉

今年から食材宅配、生活クラブの「本の花束」に

本の紹介を書くメンバーになりました。

会員の方のみに配布されるお勧めの本のカタログですが、

掲載されましたらお知らせします。

 

他に去年本の中のエッセイを1つ執筆し出版される予定ですが、

まだ出ていません。

こちらも決まり次第、ご紹介させてください。

 

季節で読みたくなる本 田辺聖子『シクラメンの窓』

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 駅に近づくとき、郊外の私鉄電車はスピードを落す。手前のカーブがきついので、線路すれすれまで建った家々の軒を掠めそうになる。やがて駅へすべりこみ、するとホームを隠すような看板で、もう家々は見えない。産婦人科、金融、海老料理店などの看板がつづき、天井の切れたホームの鼻先に、駅前のショッピングビルがそびえる。

ーそのカーブの直前、線路沿いにひしめく民家に車体は傾ぐ。そのうちの一軒の平屋、出窓の一隅に白レースのカーテンが、襞多く畳まれていて、ガラス窓のうちに花の植木鉢が置かれているのが見える。

 冬から春はシクラメンで、夏・秋はべゴニヤか、ゼラニウム、いつも赤い花だった。

 

田辺聖子さんの『シクラメンの窓』に出会ったのはいつのことだったか。

いつしか思い立って田辺聖子全集をかたっぱしから読みあさっていた時に

出会ったこの短編を、こよなく愛しています。

 

この冬も再び、この小説が読みたくなって図書館で探しました。

何度読み返しても新鮮に感じられるこの冒頭を皆さんと分かち合いたくて、

長々と引用しました。

いつも読み返すときは話の筋にもう一度触れたくて、冒頭部分は

あまり思い出さず(せず?)に読み返すのですが、

冒頭を読むたびに惹き込まれ、変わらない新鮮さにはっとするのです。

 

舞台は大阪。1人暮らしの女性がある日この窓に飾る鉢を持ってきた男性と

知り合い付き合っていく短編です。

普段恋愛のものはあまり読まないのですが、

田辺聖子さんの恋愛小説は別もの。

どの主人公もさっぱりと自立していて、

なんだか読後もさわやかなせいでしょうか。

 

今年、うれしいことに全集でしか載っていないと思い込んでいたこの

シクラメンの窓』が、2冊の本に収められていることを知りました。

写真の2冊に含まれていました。

 

何度読んでも新鮮で、忘れられないこの「シクラメンの窓」。

普段本の所持にはドライなわたしですが、この作品に関しては

あまりにも大好きなものですから、

古い文庫を手に入れようと決めました。

 

今年もたくさんこのhon-nomushiブログを読んでくださった皆様、

ありがとうございました。

来年も細々と沢山の本と出会い感動・感激し、その作品を

皆様とブログで分かち合うことができましたら、

とても幸せです。

 

余談ですが、勤務先が学校のため図書館に足しげく通っていたら、

なんと校内2位の読書賞をいただきました(90冊)。

その話を家族に誇らしげに言いましたら、

ちゃんと働いているのかと言われました(笑)。

 

皆様、良いお年をお迎えください。

全て作るレシピの本 中川たま『たまさんちのおおらかなおやつ』

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レシピの本は基本的に買わずにすませたい。

本を見て「これ作ってない…」となるのが嫌だから。

けれども久しぶりに、新生活になったばかりの今年の4月に

この本と出会ってから、

あまりに図書館で何度も借りすぎて、

さすがに買おうと決めました。

 

この本の良さ。

それはお菓子のジャンルが多様なこと。

ちょっと何か作りたいときのクッキーや、

本気で作りたいときのおもてなしケーキ。

たべたいときに気軽に作ることのできるチーズケーキや、

暑い時にたべたくなるゼリー。

どんな気分にも答えてくれるような、

多様なバラエティがありながらも、

それぞれのレシピの数はそこまで多くはないので、

せっかく買ったのに作っていないレシピがちらほら、

という状況にならずに済みそうなところが気に入っています。

 

本の中のレシピで何度も作っているのは、

自家製ホットケーキミックス

作っておきさえすればいかようにも変化させられるのが

お気に入りポイント。

和のお菓子レシピやジャム、甘くないおやつも載っているのが

とっても気に入っています。

 

もし年末ちょっとおやつを作りたいな、と思ったら、

この本をぜひ手に取ってみてください。