このブログには、「味わい何度もかみしめる」
というカテゴリーがあります。
どんな本をここに入れているかというと、
読んだ後に本を通じて知ったことを軽々しく口にできないような、
少し重めのテーマを扱った本だったり、
小説でも何度もその場に自分がいたら、
と思い返しながら読んだ本が集められています。
要は考えさせられるテーマの本をたくさん集めている
カテゴリーなんです。
このカテゴリーにぴったりだと思ったのが、
今回紹介する「葬られた本の守り人」です。
物語が始まる時代は1930年のアメリカと、
1932年のドイツ、ベルリン。
それぞれ女性が主人公ですが、
2人の運命が少しずつラストに向かって重なっていきます。
戦争で戦う兵士に本を送る活動がとん挫しないよう、
アメリカで積極的に働くヴィヴ。
ヒトラーが頭角を現し始め、そしてその時代に
ベルリンに招かれた新人の作家、アルシア。
2人は別の側面から戦争に翻弄され、
愛する人を失ったり、戦争によって傷つけられたり、
その時代の背景が生き生きと描写されています。
そして1933年5月にヒトラーの意に背くような本は
全て焼かれてしまったという歴史的な出来事によって、
決定的に人生がかわってしまったアルシア。
歴史を肌で感じるというのは、こんな小説をよんで、
その時代に生きていた人を身近に感じる事なのではないでしょうか。
わたしはこの小説に出会って、架空の人物であったとしても
この時代の人に本当に出会った感覚を持ちました。
そしてそれは作家の筆のなせるわざであることは、
間違いのないことです。
ああ、本当に、こういう心に触れる本に出会えるという奇跡。
訳者の方の努力にも頭が下がります。
すぐに読み切れる本ではありませんが、
出会ったらぜひ読んでみてください。