hon-nomushi’s blog

人生の友になる本との出会い

傷ついた体験を本という場でわかちあう 光野桃『実りの庭』

大好きな光野桃さんのエッセイ。 中学生の時、どれほど光野さんの描くイタリアの美しい女たちに 憧れたことか…。 大学生の頃まで、光野さんのエッセイは本棚の大部分を占めていました。 その後少したって、文庫にしたり手放したりして、 いつの間にか少し距…

何でもない日常が小説になるとき レイモンド・カーヴァ―『大聖堂』

ずっとずっと、名前は知っているのに読んだことのない作家はいるもの。 こんなに毎日本に触れているのに、それでも読みつくせない。 きっと人との出会いのように、本との出会いにもタイミングがあるのだと 思うのです。そうして今読んだことのある作家になっ…

物と人 森瑤子『人生の贈り物』

先日、帽子をめぐる面白かった本を紹介した後、 物について考えていました。 hon-nomushi.hatenablog.com 大切にされた物、どうしても手放せない物、 人それぞれにある物との関係。 思い出したのが今日の本でした。 森瑤子さん。大人の恋愛についての小説を…

読み切った充実感 ジョナサン『フリーダム』

つい借りちゃった…と家に帰って我に返るくらい分厚いアメリカの小説。 この表紙のデザインがすばらしくて手に取ってみましたが、 読むのを中断するのが難しくて、3日ほど読み込んでいました。 読むのをやめられないほど面白かったか? と言われると、内容は…

それぞれの物語 アントワーヌ・ローラン『ミッテランの帽子』

なぜか横になってしまって…見にくくてごめんなさい。 この美しい表紙を、首を横にしてみてくださいね。 主役は帽子。 フランスの大統領フランソワ・ミッテランが ある日レストランに帽子を忘れ、 ひょんなことからその帽子を手に入れた3人が、 ぱっとしない…

静かな本 ナン・シェパード『いきている山』

図書館の新刊本コーナーにひっそりとあり、 この美しい表紙に魅せられて借りてきました。 作者は1893年、スコットランドに生まれ、 1981年に亡くなっているナン・シェパード。 1944年ごろ書かれたこの作品は日の出を見ず、 1977年にようやく出版されたのだそ…

子どもとの対話 野口絵子、健『父子で考えた「自分の道」の見つけ方』

お世話になったジュエリーデザイナーの方にすすめられて出会った、 すてきな本をご紹介します。 「世界ふしぎ発見」ニュージーランド紹介で リポーターとして活躍されている野口絵子さんと、 登山家で絵子さんの父である野口健さんが著者の本です。 「世界ふ…

知らないことを知る楽しみ ライス『英国教会の解剖図鑑』

火曜から水曜の大雪のおかげで、てんやわんやしていたここ数日。 火曜、または金曜ブログ更新のペースがすっかり乱れてしまいました。 おまけに体調と心の不調で小学生が家におり、 自由な自分の時間がなかなか作れずにいます。 そんなこんなでいつもと全く…

自分でできる自分のごはん 上田淳子『子どもキッチン』

自分が子どもの頃は、料理といえばお母さんがしてくれるもの。 そんな風に育ったのち、家を初めて出た時、 家事の大変さに途方にくれたのを覚えています。 その経験から、 自分にも子どもができたとき、 一緒に何かを作っていけたらいいな、 自分でできるこ…

食卓に新しい風を 上田淳子『フランス人に教わる3種の”新”蒸し料理。』他2冊

何でこの本を知ったのか忘れてしまったのですが、 フランスの家庭で食べられている日常のお惣菜がたくさん載っている とっても素敵な本でした。 開いたとき、「あ、なつかしい!」と思ったものや、 フランスで暮らしていた時に「これはなんだろう?」と思っ…

事件解決だけではない面白さ へニング・マンケル『手/ヴァ―ランダ―の世界』

お正月、何もない自宅に持ち込んだ本に心が動かなくなってしまって、 とうとう読むのをやめてしまいました。物語の筋はある程度面白かったのに、 なぜか読み進められなくなってしまったのです。 これはわたしにはめったにないことで、自分でもびっくりしてい…

再び、銀色夏生『外国風景』

あけましておめでとうございます。 昨日から住んでいる街は、なぜかもやがかかっています。 今朝も少し。 そうしたら、この本の写真のことを思い出しました。 hon-nomushi.hatenablog.com くっきりはっきりした写真もたくさん掲載されているのですが、 今朝…

旅で出会ったうれしい本 松原ともこ『ふんっする生理』

女性の方で、周りに生理のことを気軽に相談できる方はいらっしゃいますか? わたしは思春期の頃、そんな人は全然いませんでした。 友達ともなんだか恥ずかしくて話せないし、 話題にしようと思ったこともありませんでした。 保健では一応習ったけれど、1度ビ…

みずみずしい作家のエッセイ くどうれいん『虎のたましい人魚の涙』

れいん→Rain?→玲音。 くどうれいんさんのお名前を初めて知りましたが、 昭和生まれの頭のなかでは上のような変換をしていました。 お名前からもわかる通り、若い作家の方のエッセイです。 なぜ予約したのか、きっかけを忘れてしまったのですが、 すてきなエ…

編み物とウイスキーと 三國万里子『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』

なんて素敵なエッセイなんだろう。 文庫になったら絶対手に入れよう。 読み終えた時心からそう思いました。 編み物作家の三國さんの、初のエッセイだそうです。 ご主人と出会った頃の話、 学生を終えて東北の秋田で過ごしていたころの話、 そして今の編み物…

かつて当たり前だったことを子育てに取り入れる 天野秀昭『「遊び」の本質』

先日、知人にすすめられて見たどろんこパークの映像。 www.nhk.jp はじけるような笑顔の子どもたち。 小学校に行けなくなったり、行きたくないと思う子どもがたくさん 映っていました。 うちの子どもといっしょに番組を見ていたら、 「もう一度学校が嫌にな…

全ては自分ごと エル・マク二コル『魔女だったかもしれないわたし』

かわいらしい表紙の本。 読み終えると、様々な物語のモチーフが 表紙に描かれていることがわかります。 主人公は自閉を持つ少女、アディ。 刺激が強い場所や、新しい場所は苦手ですが 興味を持ったことにはとことん、追及できる賢い女の子です。 けれども学…

これからの生活のために 石黒智子『60代 シンプル・シックな暮らし方』

この上もなくシンプルで美しい表紙の中に、 これまた美しい生活の写真の数々。 石黒さんの生活には、雑音がないと思うのです。 無駄がなく美しく、全てに意味があって選ばれている。 そして、生活がちょっとずつ変化をしている。 40代、50代、60代。 家族の…

小3シリーズにはまる マジック+ツリーハウス

最近子どもと図書館に行くと、入り口直ぐの子どもコーナーですぐバイバイ。 わたしはしばらく自分の本を探索して、子どもコーナーに戻ります。 子どもも図書館には慣れたもので、好きな本のコーナーをあっちこっち。 前はわたしに頼まないと恥ずかしくて話せ…

「食べたい」ものを自分で作る 有元葉子『有元葉子のシンプル和食』

フランスに留学していたころ、それほど食にこだわりがなく、 スーパーで手に入るもので食事をしていました。 けれども日本食品は、首都パリでないと手に入りにくくて、 色々な日本食を恋しく思っていました。 中でも、餃子、お豆腐、納豆は本当に食べたかっ…

ずっと大切にしている物語 フェルト『きかんしゃ1414』

わたしの本棚は決して大きいものではなく、 本を読む分量のわりに、蔵書はかなり少なめです。 それは、図書館を自分の本棚と思っているから。 でもその中で、本棚で不動の位置を占めているものが何冊かあります。 そのうちの1冊が、今日ご紹介する 『きかん…

人が互いに助け合う物語 ジュゼッペ・フェスタ『飛ぶための百歩』

とっても素敵な表紙の本、中身もすばらしかった! 自然科学の学位を持つ作者ジュゼッペ・フェスタが、 動物と山を愛する盲目の少年と出会ったことから生まれたこの物語。 主人公は目が見えませんが、おばさんとの山登りをこよなく愛し、 鳥にも詳しい少年。 …

スクリーンと過ごす時間の未消化感② カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト』

記事の続きです。 そんなわけでこの本を読み始めたのですが、 なぜiphoneばかり見てしまうのか、その理由が良くわかりました。 デジタルツールは使わずにはいられなくなるように設計されていること、 簡単に言うとFBのいいねはギャンブルのように依存性があ…

スクリーンと過ごす時間の未消化感① カル・ニューポート『デジタル・ミニマリスト』

今年の夏休み。 わが家では保育園に通っていた子が小学生になってから、 子どもとしっかり時間を過ごす夏休みに変わりました。 一緒にずっと過ごすことが不安でたまらなかった1年生の夏休みを終えて、 少し手が離れた2年生。 3年生の今年はさらに手が離れて…

本の厚さと現実逃避 ヒラリー・マンデル『ウルフ・ホール』 

試験前になると急に机のまわりを片付けたくなる学生のように、 現実でちょっとしんどいやることがあるとき、 わたしは分厚い長編へ挑むくせがあります。 本当はこんな分厚い長編に逃げているどころではないのだけれど…。 世界史でクロムウェルという名前を耳…

料理、環境、わたしたちの生活 有元葉子『簡単料理は簡単か?』

このタイトルを見たら、お料理に興味がある方が手に取られることが 多いかもしれません。著者も料理家の有元さんですし。 でもこの本は、実は環境の本です。 今わたしたちの地球が大変なことになっている現実。 それを台所の物からつなげて考えて、 しいては…

古くて新しい作家に出あう タリアイ・ヴェーソス『氷の城』

図書館の新刊コーナーにて出会った美しい装画。 この表紙の美しさの通り、冬の静かな夜に読むのにぴったりの作品でした。 ある日学校に現れた転校生。 ミステリアスな雰囲気を持つ彼女は、誰とも関わることなく 静かに学校にいます。 人気者の主人公は、クラ…

旅の行き先を決める本 新藤悦子『いのちの木のあるところ』

図書館でこの本の案内を見て、どうしても読みたくなりました。 実在するトルコのディヴリーの大モスクと治療院が、どうしてできたのかを 物語にした本です。 ディヴリーの大モスクと治療院は、未だにどうしてできあがったのか、 謎ばかりだそうです。 作者の…

わすれられないバインセオ 有元葉子『わたしのベトナム料理』

時折訪れる、大好きな街福岡。 おいしいものがたくさんあり、いつもどこにいこうか 迷ってしまうのですが、 最近は定番のお店をめぐることが多くなりました。 先日訪れた時は野菜がいっぱい食べたくなって、アジアンマルシェへ。 www.asianmarche.jp ここで…

こんな風に一日を記録したい いせひでこ『気分はおすわりの日』

「あ、この絵!」 と見ただけで誰の絵かわかる、細い線のスケッチ。 いせひでこさんの犬との暮らしをつづった本です。 この本の前作に『グレイがまってるから』という本があるのですが、 そのタイトルがとても記憶に残っていて、ようやく手に取りました。 わ…